過去収納 | ナノ


▼ 破壊者に救いの花を


※暴力表現あり
※固定夢主とフォルテの出会いの一例です(?)
※名前変換なし






俺の視界に飛び込んできたそいつは人間だった。
人間が電脳空間に、ましてやなぜウラインターネットにいるのか?

人間――その女は花を見ていた。
電脳で構成されたこの世界にも花が咲く。
この空間もまた人間によって作られたものだから、現実世界のものと似たようなものがあるのも珍しくない。
再現されている、といったほうが近いか。
それは、蜃気楼のようなものだ。
特にここ、ウラインターネットではそんな現象が多く見られるのだ。
まぁ、俺はそんなものに微塵も興味は無くて、くだらないと一瞥する。
相変わらず、目の前の女は一面のデータの花を愛でるように見渡していた。

俺にとって人間は復讐の対象で、最も忌むべき存在。
パルストランスミッションなどというものがあるが、この電脳空間で人間に会うなど滅多に有り得ぬこと。
待ちわびた復讐の機会だった。
愉悦を覚えながら、そろりと近づく。

「貴様......人間、だな」

女の返答は待たず、無理やり手首を掴んで逃げられなくしてやった。
彼女は冷たい刃物で背を撫でられた様にぎょっとし、必死に抜け出したくて抵抗を始める。

「お前をここで殺してやる」

「......!!」

逃がす隙も与えず、己の拳で感触を確かめながら女を一方的に殴る。
柔らかい肉体に沈み込む感覚がなんとも心地よくて、俺は笑っていた。

しばらく夢中になっていたが、簡単には殺したくはなかったので手を止めた。
女は死んではいない様だったが動かない。
しゃがみこんで様子を伺う。
髪をぐっと掴んで顔を覗き込んでみると、薄ら開いた瞳がこちらを静かに見ていた。

「うぅ......、なんで、どうして......」

掠れた声で女は確かにそう言った。

「......死ぬ前に教えてやる」

――どうしてこんな見ず知らずの他人に話そうと思ったのかは分からない。
自分の過去を、いかに人間を憎んでいるのか、その全てをぶち撒けた。
終始、女はただじっと俺の言葉に耳を傾けていた様だった。
話す気なんてさらさら無かったのに、随分と多くのことを吐き出していたようだ。
だが、つかえが取れたような清々しい気分になったことに驚く。

「......私には何も気の利いたことが言えませんが......その、辛い思いをしてきたんですね」

普段の俺なら、貴様に何が分かる、と即座に目の前のこいつを消し去ってしまうだろう。
それが今はどうか。
穏やかな......いや、なんだか少し心が暖かい気がした。心が暖かいとは、なんだ。
自分に問いかけてみても答えは返ってこない。

黙り込んでいる俺をよそに女が口を開いた。

「あの、わかりました。私を殺して心が軽くなるのなら......構いません。どうぞ、好きにしてください......」

と、目を閉じた。

――この女は、他人の為にこんなにも簡単に命を投げ出すというのか。

「......殺す気が失せた」

「え......」

すっかりさっきまでの昂っていた感情は消えてしまったので、髪を掴んでいた手を離して立ち上がる。

「今度出会ったら貴様を殺す。俺の目の前に現れないことだな」

恐怖の色を帯びていたものの、こちらを案じているような瞳がずっと俺をとらえていた。
俺とは正反対の柔らかく、慈愛に満ちた眼差し。
それが印象的で、どうしても脳裏から焼き付いて離れない。


ーーーーーーーーーーーーーーー

色々ツッコミどころはあるでしょうが、許してください...
続くかは、わかりません!←

prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -