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「竜義先輩に付き合えって言われた」
「…は?」

眼前に居るのは確かに高校が一緒で、何だかんだ仲良くしてて、学部は違えどキャンパスは一緒で、今も向かい合わせで昼飯を食べてる大西紘平、だよな?
「嘘」
「嘘だったら俺もお前にこんなこと言わねーよ」
紘平は溜息を吐いた。どうやら俺らが帰った後、タツ先輩に襲われた…らしい。
「ってか襲われたって、2人共男じゃん」
俺がそう口にすると紘平は顔をしかめた。
「…逞はそういうの嫌だろうけどさ、男でもたまにあるんだよ。俺もまさか自分が告白されるとは思わなかったけど」
食堂で話を聞くと提案した俺を却下し俺の部屋で話すと言った紘平は正解だ。確かにこんな話は不特定多数居る中では無理だ。
「つかタツ先輩ゲイだったの?」
「知らない。だけど口説かれた」
口説かれたって…
面食らってる俺に対して紘平は溜息を吐いた。
「紘平溜息吐きすぎ」
「ごめんな、逞に話す内容じゃなかった。でも聞いてくれてありがとう。ちょっと落ち着いた」
全然落ち着いてない。聞いてる俺自身何も言えなさすぎでこんなんじゃダメだろと頭が警報鳴らしてるけど何言えばいいんだ?!
「紘平はいいのかよホントに」
「…何が」
帰り支度してた紘平に声を掛ける。
「付き合うって、襲われたとかって、タツ先輩のこと本気で好きな訳じゃないだろ。男同士だしさ」
沈黙。紘平が何故か何も言わない。
「あー、紘平?」
携帯の着信音。
俺のじゃない、紘平だ。
「もしもし、あ、はい。―大丈夫です、今から向かいます」
紘平は俺に背を向けて喋る。相手は誰だ。
「いや、今公衆の面前なので取り敢えずそっち向かってからで良いですか?」
電話の相手はタツ先輩じゃないか、一瞬そう頭の中で過ぎった。
「タツ先輩かよ、なぁホントにいいのかよ紘平」
「逞」
電話を切った紘平は俺を見た。口を開く。
「逞はこういうの嫌いだろうけどさ、俺は大丈夫なんだ」
「え、」
大丈夫ってどういうことだ。
先に大丈夫じゃなさそうに相談してきたのはそっちじゃないか。

「俺は男同士は大丈夫なんだ、だって」
一瞬、紘平が哀しそうに笑ったように、見えた。



部屋に独り残された俺はさっき紘平が口にした言葉が頭から離れなかった。



「俺自身が男しか愛せないんだよ。
俺―ゲイなんだ」

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