興味本位でゲイバー行ったらそこには1人ちまちまとカクテルを飲んでるゼミ長がいた。 ***** 「んっ、ん、んぅ」 トイレの個室でしゃがみ込んで俺のを喉奥まで咥え込んでフェラしているゼミ長。同じゼミだけど普段全然接点がないから名前とか知らない。 目を瞑って両手で根元を抑えて、俺に頭を押さえつけられてるせいで喉奥まで必死に咥えてるけどこれ大丈夫なんかな。顔少し赤いけど。まぁ噛まれさえしなきゃ別にいいか。 目尻を赤らめて、舌も使って必死に舐めている。時折呼吸がしんどいのか表情が険しくなるけど別にだからといって配慮なんてしない。 「面白いよなー。教授からも他の女生徒からの信頼も厚いゼミ長が実はゲイバーに通うほどの同性愛者で同じゼミの奴からこーんなことさせられてるんだもんなー」 そう言い鼻で笑ってやると羞恥心を煽られたのかゼミ長の顔が赤くなる。尚更より奥へと突っ込んでやった。 俺はもちろんゲイバーに来たのは今回が初めてだし、同性愛者でもない。普通に女の子が好きだし。 「へったくそ。なんなのゼミ長、全然気持ち良くないわ。もしかしてゲイバー通うほどの男好きでも全く相手にしてもらえなかったとか?」 鼻で嘲笑してやる。ゼミ長は普段澄ました顔で講義を受けて女共にもちやほやされているが格段イケメンとかいうわけではないと思う。どちらかというとあまり印象に残らない感じの顔の薄さ。俺が言えることでもないが平々凡々、と言ったところか。 そのゼミ長が俺のものを口で頬張りつつ、目を見開いた。 「心外だとでも言いたいの?だってヘタクソすぎて勃ってないのは咥えてるゼミ長もわかってると思うけど」 んーんー言っているゼミ長。俺の言葉を否定したいのだろうか。フェラされてもヘタクソなのはヘタクソだ、事実を言ったまで。 さらに口の奥へと押し込んでやる。喉にごりごりと当ててやりたい気分にもなったが、さっきから呻き声がうるさい。耳障り。 「あぁ、それともいつも挿れられてるだけか」 その俺の言葉に首を少しでも横に振ろうとするゼミ長。軽く噛まれたのにも苛立ったのでもういい、と無理やり離した。 「いってぇわド下手くそ。まじで萎えた。そりゃここまで下手くそだったらゲイだろうと誰からも相手にされないわなー、俺もこんな下手くそに挿れたくもないわ」 その言葉がショックだったのだろうか、ゼミ長の表情が陰る。いつも澄まし顔で女に囲まれても無表情だったのに、今日は少しでもその表情の変化が見られただけまぁいいか。 いずれにせよ、こいつが性的な意味で使えない奴なのは変わりない。さすがに男の穴に突っ込む趣味は俺にはないし興味もない。他の変態男にでも突っ込んでもらえ、とは考えた。 見ず知らずの他人だったりもう少しフェラが上手かったら突っ込んでたのだろうか、発想として考えたこともなかった。 先ほどまで奉仕させていたブツをしまいつつうずくまっているゼミ長を見る。顔を俯かせて声は抑えつつ恐らく泣いているのだろう、肩を震わせて床には雫の跡。その姿を見て罪悪感も同情も興味も何も湧かなかった。 「誰か適当に相手してもらえるといいな下手くそ、じゃあな」 背を向けると何か言いたそうに顔を上げたゼミ長に気づきつつ、そのまま置いてきぼりにして立ち去ることにした。 だから俺にはゼミ長の思惑も何も、知らなかった。 *** 店の喧騒が遠くに聞こえる。声が出ない。 逃げるとか助けを呼ぶとか、そういう考えには至らなかった。 いつもと変わらず黙々と飲んでいた時に声をかけられた。自分の性の自覚に気づき、解決方の一つとして似た考え方の人が集まるバーで飲んでどれくらいの期間が経ったのか。 彼の言うように相手にすらされてこなかった。 そして初めて声をかけてきた相手が、普段からずっとずっと思っていたその人だった。なぜここにいるのかとか彼も同性愛者なら自分にもチャンスはあるかもとか、そう考え勇気を出して伝えようとか思う間もなく、奉仕を強要され下手くそだからやめろ、と行為を止められ何も伝えることもできず立ち去られた。 同性愛というマイノリティの性癖を持った自分。その上マイノリティの誰からも相手にされない。初めて相手にされた思い人にも下手くそと罵られて終わる。 自らの生きている価値は一体なんなのか。 憧れ、彼に会うことが日々の生き甲斐でもあった、そんな彼にも見限られた今、全てにおいて何をすればいいのか。 個室の扉に凭れ、彼は虚ろな目で天井を視界に入れる。 襲いかかってきた感情は、もはや諦観であった。 ← |