宙さんの発言の意味を咀嚼するのに時間が掛かった、というか、驚きを隠せない。
「えっ、本当に…?」
女の子じゃない、と知って血の気がさっと引くが、宙さんはそんな僕を知ってか知らずか話を続ける。
「本当。そうじゃなきゃ、彼らはこんな隠れた場所で活動なんてできないよ。それでも口コミとかネットとか色々あって、ここも少し有名になりつつあるけどね」
法的には良くないんだろうけどさ、と大事なことを笑っていいのける。そんな会話を僕らは小声でしつつも、壇上の彼らに目は釘付けである。彼らの踊りは女の子顔負けのしなやかさも持っているんじゃないかってくらい。声も少し低めなのは気にはなるが、彼らは性別は男です、というネタバレさえなければ普通に地下アイドルの公演としては違和感を感じることなく観ることができると思った。

数曲続けて終わった後の自己紹介。壇上の何人かははけて、特に観客から歓声の大きかった二人が残る。
「皆さはこんばんはー!Bg cafeにようこそ!今回のMCは僕アスカと隣にいるメグでお送りしまーす!」
再び観客からは歓声が上がる。MCの内容は、主に普段の生活のこと、そしてこのBg cafeで過ごしてきたことなどについてだった。
ツインテールのメグが一息ついて喋り始めていた。
「なんだかんだで僕たちの活動も一年ちょっとを迎えることができました!最近新しい子も入ってきて、そろそろ彼らもカフェの一人としてこの壇上に上がって歌ったり踊ったり、あとはーそうですね、"接客"したりすることになるかと思います」
「どうか皆様、普段僕たちにしてくれてるように優しく接してあげてくださいねー、もちろん、僕への応援も忘れないでくださいよー」
ウインクするアスカ。彼は肩までの髪を内巻きにしているがあれはウィッグなのだろうか。
「あっアスカずるい…僕、メグのこともわすれないでよー!
よろしくお願いします!」
再び観客から上がる歓声。そしてわらわらと10人くらいが続けて壇上に上がる。
皆お揃いの赤のスカートの制服姿で揃ってよろしくお願いします、の声と一礼。宙さんに聞くと創設の時からいるメンバーらしい。
「そして今日はなーんと!新入りさんこと2期のメンバーも一緒に"接客"いたしまーす!」
場内からは更に大きな歓声。その声と同時に、これまた1期の人とは色違いの青の制服を着た10人くらいが壇上に姿を現した。
一人一人自己紹介がはじまる。たどたどしかったり、緊張して噛んじゃったり、可愛い子が多いように感じた。
右端、つまり一番最後に紹介する子はそんな中一人だけこのメンバーらしくなかった。可愛い、あるいは儚げな子が多い中普通に男の子、って感じの子がいたのである。スカート丈の短さを気にしているのか、他のメンバーが喋っている中スカートの端を引っ張っている。
「…っ、み、ミヤっていいます、よろしくお願いします」
ボブヘアーで少し低めのその声にどこか引っ掛かりを感じつつも、飾らない感じのその子が僕は気になった。
「中央のレイちゃんよさそうだなー、悠麻くんは?」
そう尋ねる宙さんにもその旨を伝える。
「あー彼か、なるほどねー」
宙さんの笑みが深いことに僕は気がつかなかった。





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