年中夢中 | ナノ
自分が生きているってことが奇跡だといつも思う。
色々イライラする要素があっても何だかんだで生きれているって奇跡。



地震地震って何年も前から騒がれてる地元だが実際はそれらしいものはなくて、
他の地域では痛ましい惨状が日々ニュースやら何やらで思い出されたように繰り広げられている。
それから1年。
「震災を忘れないように!」
と車道を歩く人々。横断歩道は一時的に機能を失い、警察官の人々が前で人の群を必死で阻止してる。
「交通断絶してまでデモやる価値あるのかね」
「警察官や子供達も一部の大人達のために可哀想」
デモ隊の中には親に連れられてであろう、小さな子供も何人も居た。
「コスプレとか不謹慎」
「つかデモカーには雇用うんたらって…統一しろよ」
道行く人々は様々なことを言う。
これに対して被災地の人々はどう考えるのだろうか、もしこの地域で危惧されている震災が起きたとき、1年後に全く同じセリフが彼らは言えるのだろうか。
自分の身近な人が亡くなったら?

***

去年の今日地震が起きた。
そのため翌日あるはずだったライブはなしになった。
独断で決めた部長の理由は「不謹慎だから」。副部長はじめ批判されていた。
ライブの日のはずだった翌日、駅前で急遽募金活動。
大学生どもがやる活動なんて、大人から見たら信憑性が薄い。まだ少し肌寒い時期にはつらいものだった。
結局大してお金は集まらず、部員の財布から野口さんが何枚か飛んだくらいだ。
これで何か力になれたならそれでも良いけど。

***

「あら横瀬さん奇遇」
「…どうしたんですか戸倉先輩。らしくない」
ヘッドホンを外す横瀬。
「ちょっと今日用事があって。横瀬は?」
「暇だから楽器屋見てたんですよ」
スコアも何も買ってないですけど、と言う横瀬。
「あー俺も楽器屋行かなきゃ」
「行ってらっしゃいませ先輩」
「えっ酷いな付き合えよ」
「奢って下さるなら考えます」
そんな金ねぇよ、と心の中でぐちる戸倉。
恐らく横瀬も白髪の混じった灰色の髪といえど何だかんだ真面目な性格なのでついてくる気がなくてそう言ってるのだろう。
横瀬をいじるのは楽しい。
「タリーズならいいよ」
「タリーズ行ったことないんでスタバなら」
「俺タリーズの気分なんだけど」
「ス・タ・バ」
…この我が儘野郎。
横瀬限定で震災起これよ。

***

「…あれっ真聡だ珍しい」
窓越しの喫煙席から戸倉真聡と同じバンドである添田嶺汰と児玉隆文は二人を見つけた。
「横瀬も居るじゃん、何あの二人デート?相席させようぜ相席」
「はぁっ!?バンド以外で二人で居るってばれるやん」
児玉の大声で店内の周りの目線を浴びる。
「…隆文がそうやって挙動不審にならなければ誰も俺達がデートしてるって思わないよ」
添田は小声で児玉に耳打ちしてやる。少し顔を赤くした児玉を見て添田は満足げであり、アドレス帳から戸倉の電話番号を出した。



***



どうか毎日を少しでも楽しく、平和に過ごせますように。

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