年中夢中 | ナノ
昔から煙草の匂いが大嫌いだった。
数多く並ぶ煙草の自販機を見て大人共は何好んで買ってんだか分からなかった。
両親が倹約家で「酒も煙草も金の無駄」ってタイプだったからというのもある。
…両親の金の感覚に関しては初めて自分で稼いで買ったエレキギターを「無意味なものに金遣って」と即日捨てられて以来反感しか覚えていないが。捨てるってどういうことだよ、2万のギターだけど。今考えたら普通に中国製だけど。安物だけど。
ちなみに両親がロック系の曲大嫌いだと知ったのはつい最近だったりする。

「いや、意味分からんから。私今日確かに誕生日だけど何か勘違いしてますよね、今日19ですって」
部室で広げられたプレゼントの山。構ってくれてかつバンド違うのに自分なんかの誕生日祝ってくれるのはめちゃくちゃ嬉しいけどもね、これはだめだろうよ。
「いや、あんな飲み会で飲み放の世話になってる奴が今更未成年とか言うなし」
「いいじゃん、世間様はその髪色見ても未成年だとは誰も思わないし」
向かいに座るのは次期部長様副部長様。
「老け顔は否定しませんよ添田先輩」
「その携帯灰皿私が選んだんだよー!章ちゃん黒とか灰色とかばっかりだからワンポイントでピンクとオレンジ入れても似合うし」
「葉子ちゃんのチョイスは褒めるけど携帯灰皿はあかんやろ、第一私煙草吸わないし」
「横瀬はジッポ収集家だからって高羽弟教えてくれたぜー」
「中学の射的の話だからね、このデザイン良いけど話広げすぎだって後でタツは怒っとくわ」
「たっちゃん可哀想ー」
横には同学年ばかり居るんじゃないかってくらい。普段自分の所属するバンドとは関わり持ちたがらないくせにどうした。
そして何より、

「誰やねんマルボロチョイスしたのは」

机の上にはマルボロカートン箱と携帯灰皿、ジッポ。

***
煙草。しかもカートン。
入手出来る奴なんて限られてるけど取り敢えずおっさん煙草をなぜ選んだ。
「いや、あきはさんが1ミリ吸うとも思えないし」
「最初章ちゃんに女の子向けのにしようってなったけど章ちゃんこっちのがしっくり来るし」
「はーちゃんメンソール嫌いって言ってたし」
「添田先輩と児玉先輩マイセンだしおっさんセブンスターでラークが河瀬でとか延々考えての消去法」
「何やねん消去法って」
要するに嫌がらせか。
「でも横瀬章葉はマルボロって軽音全体でも満場一致でまとまってさ、流石に金マルはあきはさんが無駄に俺達に謙遜して受け取ってくれないんじゃないかってなって赤マルですごめんね!てへぺろ!!」
「配慮ありがとうございますまぁ赤マルでも受け取りませんけどね!てへぺろ!!」
添田先輩がくっそ笑顔で腹立ったからこっちもくっそ笑顔で返してやった。
「えっ受け取ってくれないの…」
可愛い可愛い葉子ちゃんが目うるうるさせてるけど見えてないふりをする。
「…あなた方は未成年に煙草吸わせようとしてるのですか、法律違反じゃないですか」
「お・さ・け」
ドア付近の戸倉先輩が大声で言う。
私あの人苦手なんだよなー敢えて逃げれないように遠ざかってんだろなーめんどくせーなー
「…俺はカルーア原液ロックで飲む奴よりはめんどくさくないぞ」
それ言う辺りめんどくせーんだよ心読まないで下さいよ先輩。
「まぁマルボロだったら俺もだし?黒マルだけど一緒に喫煙所行こうぜ章葉」
おい誰だマルボロクラスタ居ないとか認識した奴。
あと皆、
「下の名前で呼ぶな」
***
表面上貰ったけどカートン箱捨てましたよ?
ジッポと携帯灰皿はありがたく頂戴しましたが使い道がないのが最近の悩み。
なのに戸倉先輩に休み時間とかに喫煙所連行されるんだけど勘弁してくれ。
「恋人嫉妬させるために私をダシにしないで下さい関わるのめんどくさいので」

この人何がめんどくさいって、

「えっだって最近添田と隆文が俺の眼前でらぶらぶしてるんだぜ!?ホント目障りだしバンド練最中でも気まずいんだよな…」

おい変わってくれ
私に三次元のホモカップルくれ

------------------------------
あきはさんは腐女子さんです
ちなみにおたばこの話は実話だったり

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -