年中夢中 | ナノ
※未成年の飲酒喫煙は法律違反です

「煙草買ってきて」

そう言ってお金を渡された。
「お前同学年でよく煙草買えるな」
俺は嫌味を含めてそう返したが。

***

初めて参加した軽音サークルの新歓飲み会は同学年の男子が異様に少なかった。
一緒に入るつもりの男子も来なかったし、まぁいいか、という考えでいた。
煙草の煙が大嫌いな俺は息を止めて横のテーブルを通り過ぎる。

…えっ、あいつ明らかに1年だろ。

入部説明などで何度か見かけたことのある男子が先輩に混じって煙草を吸っていた。
顔の雰囲気では大人っぽいけど浪人とかで20過ぎてるとも考えにくい。
その男を見ていたら目が合った。
奴は立ち上がってテーブルを離れる。そして俺の眼前に来て、

***

横で煙草を吸う。
あいつは煙草の煙の匂いが大嫌いらしい。
嫌がらせも兼ね毎回煙草を買わせに行かせようとしたが頑なに拒否される。
見た目チャラそうなのに案外堅実なんだな。
飲み会に行っても絶対呑まない。勧めて漸くノンアルコールを呑むくらいだ。
自分の限界知ってるとかじゃなく取り敢えず未成年だから飲酒喫煙が嫌らしい。
何その健全さ。
絶対奴は童貞だと俺は踏んでいる。

だから俺はそんな奴の横でわざと吸ってやる。
バンドも一緒で、学部は違えどキャンパス一緒、そんなあいつと居ると煙草の量の減りが早くて今地味に金欠なのは内緒の話。

「…お前未成年だろ」
煙を吐く。だから何なのさ。
「誕生日2月29日とか俺より下じゃん」
…意外。俺の誕生日知ってたのね。
でもそれをたかだか俺より1週間前に生まれた人に言われたくない。
どうせ俺もお前も成人式で酒は呑めない。

「気をつけろよ、煙草なんて体には毒でしかないんだから」

そう大して仲良いわけでもない俺の心配してくれるとかお前何なの、俺のこと好きなの、彼女気取りかよ。
俺嫉妬深いから拘束するよ?
俺は乾いた笑いをした。

***

あいつの匂いが変わった。
「…銘柄変えた?」
俺は相変わらず煙草の匂いが大嫌いだけど、学部以外大体行動パターンが一緒なあいつと一緒に居るときだけは耐性がついたようだ。
あいつは聞いた俺の方を見る。
あ、珍しい、普段目なんて全然合わないのに。
「…何だ、匂い分かるとかお前も煙草吸ってんじゃん」
いや、何でそうなる。

***

ぽかんとしてるあいつを見て、素直に面白い奴だと思った。
全く、んなわけないだろ。煙草吸ってたら喫煙者かどうか大体分かる。
初めて会った時から煙草の煙で少し顔をしかめるあいつ。最初の頃に比べたら大分耐性ついてるみたいだけど無理しなくてもいいと思う。
まぁ俺が無理やり一緒に居させてるんだけど。
バンドの打ち合わせだ何だって言い訳つけて結局毎日会ってる。昼も喫煙所で一緒に食べさせている。
俺は元々こいつが居ればいいからあらゆる事に付き合わせてる。友達が中々出来ないとか言ってるけど俺以外の友達なんてお前には必要ない。他のバンドメンバーでさえ正直邪魔だ。
だから俺が銘柄を変えたことに気づいたあいつに素直に嬉しいと思う。俺のことを少しずつでも理解しようとしてる。
…まぁ3日掛かったけど。
親は俺が煙草吸ってるってことすら気づいてないみたいだから(知ってて言わないとかじゃなくて本当に知らないと思う)こいつが気づいてくれたのは嬉しい。
「気分転換」
笑いながらそう言ったけど、

…お前に会ったり一人の時にすぐお前の考えるせいで物淋しくなって吸う量増えてまじバイトの時間増えてそれでも金限界とか墓場まで持ってく秘密だ。

さて、そろそろ俺の所へどうやって堕としてやろうか。
責任取れよ??

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添田×児玉馴れ初め。
束縛性悪×平凡のつもり笑
真聡視点も書きたい

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