年中夢中 | ナノ
ドラム初心者の俺にとっては、SRSの河瀬君は本当に憧れ。
だけど個人的には元ドラマーで今ベースやってるおっさんも憧れで。

おっさんは全くもってドラムの知識が無い俺にも教えてくれた。
「やべー松永リズム感なさすぎ」
って笑われるのが恒例だったけどもさ。



kid,I like quartet



「あ、やっぱり松永じゃん。
個人練取ったん??」
火曜日の3限。授業のない俺は思い切って一人で部室のスタジオを借りて練習していた。
自宅にはドラムがないから学校でやれる時は思い切って活用しよう、そう思ったからだ。
そうしたらスタジオの扉を開けたのはおっさんこと眞田だった。
「あー折角空いてるからやろうかなと」
「偉いなその姿勢は!
ギターのくせしてバンバンスタジオ入れようとする馬鹿も居るけどちょっと俺今松永尊敬した」
たまたま俺が授業なくてスタジオも空いてただけだったのだが。
過大に褒められるとどうすればいいか分かんない。
「でも松永お前さっきずれてたけどな」
「えっ嘘」
「最初ゆっくり確実に手足合わせるようにしてやれよ。
今のじゃ左右も合ってない」
ドラムだから部室の外まで響いてたのか!
自分にリズム感が皆無すぎて情けない。
「成田と多分松永じゃね?って話になってさ。
『あーみずきちゃんまたやってるー』ってあいつ笑ってたぞ」
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!
バンド練でも成田にはリズム感のなさをネタにされてしまうからだ。
しかも成田は俺のこと嫌がらせでみずきちゃん呼んでくるし!
「松永顔真っ赤じゃねぇか」
「よりによって成田と眞田に聞かれるとか…!!」
そう俺が言うとおっさんは大爆笑しやがった。
「いや成田と同じバンドじゃねぇか松永」
でも成田に自主練聞かれたくなかった。
何かちょっと悔しい。
「でも成田も『さつきちゃん』なのにな。
松永はちゃんと頑張ってるしあれはちょっと酷いよな」
…あれ?
「眞田がそう言うの何か意外かも」
「おいお前それ酷いぞ!!」
何か、笑えてきた。

結局、その時間はおっさんにドラム教えて貰った。
そしたらおっさんも「久々にドラム叩きたい」って技術披露してくれたし。
連打が凄すぎて本当にやばかった。格好良かった。
おっさんの家には電子ドラムがあるらしい。
「やっぱ本物がいいわ」って言ってたけど普段からやってるからか上手かった。
ベースも上手いから本当に凄い。羨ましい。
そう言ったら、練習しろって笑われた。

つか電子ドラム買いたくなったじゃんか。
今俺金欠なのに。

練習終わって隣の部室に行ったら成田が居た。
「あ、やっぱりあれやってたのみずきちゃんか。
何、おっさん教えてたの??」
みずきちゃん、そう呼ばれたのに俺が少しむっとしてるとおっさんは、

「うるさいぞ『さつきちゃん』。
お前松永頑張ってるんだから努力認めろよ」

そう言ったから俺はおっさんを見上げる。
成田もおっさんを見る。
「…どうしたのおっさん。
俺は『みずきちゃん』のことちゃんと認めてるぜ?」
「お前がみずきちゃん言うなら俺が軽音の皆にお前のこと『さつきちゃん』呼ばせるぞ」
それを聞いた成田は気持ち悪い、と笑ったが、
「まぁおっさん嫉妬深いもんな」
と意味分からないことを言った。
おっさんは少し黙って携帯を取り出し
「あぁ、じゃあ軽音の女子メンにさつきちゃん呼ばせのメール送るわ」
「…何でもないです前言撤回させて下さい」
流石に堪らないのか携帯を早速いじりだしたおっさんに対し成田が降りる形になった。
「どんだけ嫌なんだよ『さつきちゃん』」
と笑うおっさんに対し
「…横瀬に呼ばれるの考えたら吐きそうになった」
と成田は言った。
確かに横瀬に言ったら確実にネタにされるだろう。
成田の横瀬嫌いは軽音の名物となりつつあるし。

「じゃあな松永、次聞く時はもう少し上手くなれよ」
そう言いおっさんは笑って俺の頭をくしゃくしゃ撫でた。
「児玉今日本当にありがと」
ちょっと髪は崩れたけど自然と俺も笑顔になる。
「…松永のはにかんだ顔見ると教えた側として冥利つきます」
「わー、おっさんやらしー」
横の成田の発言。
「…横瀬のアドレスは、っと」
「わーごめんなさいごめんなさい本当にごめんなさい!!」

そんな二人のやりとりを見てると笑えてしまう。
「「松永笑うなよ!!」」
もっとおっさんに褒められるように頑張ろう。頭撫でて貰おう。
そう思えたんだ。

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社会人→大学生という眞田さんはおっさんと呼ばれています

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