「…やばいな」
閉じ込められた古市はぼやく。
「あーあ、今頃舞踏会始まってるだろなー」
屋根裏の窓からお城は見える。煌びやかなお城。
「王子様ってそんなかっこいいのかな…つか男鹿どこだよ」
いつも一緒に居るためふと独りきりが続くと寂しくなる。本人には断じて言わないが。

「貴之様」

ふと誰かが呼ぶ声がした。声のした扉の方を振り返ると…
「…アランドロン」
呼ばれた彼はひらひら手を振った。
「やっとお気づきになられましたか貴之」
「だから名前で呼ぶな気持ち悪い」
「しかし貴之を貴之と呼ぶのはこの儀式には必須なのでございます」
「連呼すんな!!…ん?儀式って何の??」
古市が問いて漸くアランドロンは安心したかのように溜息を吐いた。

「今から私めが貴之を舞踏会にお連れ致します」

アランドロンは魔法使いであった。

「さて貴之、まずは馬車ですね」
王道のかぼちゃはどこから持ってきたのか、しかしアランドロンは杖を振りかぼちゃを巨大な馬車にした。
「貴方方にも協力してもらいます」
そう言いアランドロンは動物達が入れられている籠から彼らを出した。杖を一振りすると姫川と神崎が馬になる。
「おいこら!!」
更にアランドロンは近くをうろうろしていた2匹のトカゲに向け杖を振る、すると…

「あーやっとこの姿になれた」
スーツ姿の夏目と城山が現れた。
「神崎くん姫ちゃん久しぶりー馬になっちゃって…(笑)」
夏目は笑い出す。馬を操るのは城山のようで凄い複雑そうな顔をしていた。
「古市くんには上手くいってもらわないと困るからね、俺達がサポート出来る範囲でさせてもらうよ」
夏目はにこりと古市に微笑んだ。
「さて仕上げです」
アランドロンは古市自身に杖を振った。するとボロボロの服は綺麗に光るドレスに変身し髪なども整えられていく。
「…すげぇ」
灰かぶり古市とは分からない程綺麗にされた。
「さぁ貴之、お行きなさい。ただし10時までには戻ってくるのです」
「12時じゃなくて?」
現在夕方5時半。夜の10時まで時間があるわけではない。
「申し訳ありませんが私めの魔法の期限は短いのです」
さぁ、一刻も早く向かいなさい!
夏目に誘導されるがまま古市はかぼちゃの馬車に乗り動き出したのだった。

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