『じゃらし!』
本来はふりふりと振られる猫じゃらしだが、今は椅子の上に置いてある。それでも追いかけるオレンジ色の猫。
猫は大柄ながらもどう背を伸ばしても届かない猫じゃらしを必死で取ろうとする。
ふと、猫は毛糸玉に気づいた。そして―毛糸玉に狙いを定めてやってくるネズミにも。
「にゃー」
試しに鳴いてみて気づくかと思われたがそうではなかった。ネズミは猫に気づかずそろりそろりとやってくる。
用心したところで力の差は歴然、なにしろ猫は大好物がネズミ。
そろりそろりと毛糸玉によってやる。

身体が一気に縮んでしまったのもあり、神崎は簡単に目標にたどり着けなかった。漸く辿り着き毛糸玉に手を掛けたところ―
「神崎!!」
姫川が花澤に服を啄まれながら降りてきた。花澤は毛糸玉に掴んでいた神崎毎毛糸玉を持ち上げる。猫東条の爪は神崎の足元を空ぶった。
「あっぶねぇなお前!!喰われる所だったぞ!?」
「ふほとふひょうふぁへぇっふへひあひはふひ(猫東条ぱねぇっすね似合いますし)」
「分かったから落とすなよ花澤」
猫東条は神崎達を見上げている。手には―毛糸の糸。
「…!!」
異変に気づいた姫川がすぐさま言う。
「花澤、クローゼット上まで今すぐ行けるか?」
花澤はクローゼット上目掛けて羽ばたくが、毛糸は徐々に徐々に解かれていく。そして、
「あわっ!」
体勢を崩した神崎。片手が外れる。
「持てって!」
姫川が神崎に手を差し出すが神崎に届かない。
神崎は手を放してしまう。
「神崎っ!」
猫東条に捕まり取り押さえられてしまった。
猫東条は今にも神崎を喰べようとしている。
姫川が慌てて降りて一か八かで囮になろうと駆け寄った時、

「虎、遊びに来たぞ」
「にゃー」
猫東条を呼びに来たのは元使用人の相沢と陣野。二人は古市に一任されるまでこの家で働いていたが今でも猫東条に構ってやるため時々遊びに来ていた。
猫東条は神崎をほったらかして二人の所へ駆けていく。
それを見ていた隙に花澤は毛糸を回収し、姫川も神崎を回収したのだった。

「ふぅどうにか完成だな!!」
そんなこんなあったがどうにかして古市のドレスは完成した。
「うん、でも神崎お前は何一つ役に立ってなかったからちょっと自重しな」
大森の言う通り、布を必要以上に短く切ったりなど二度手間の原因は神崎だった。
「だって身体の大きさ違うからやりづらかったんだよ!」
「玉結びって基礎知識でしょ」
神崎は玉結びのやり方はおろか存在も知らなかったのだ。
「うっ…」
言い返せない神崎に大森は溜息を吐いたのだった。

「疲れた…」
夕方5時。お母様と二人のお姉様は舞踏会に行く予定だった。しかし古市はまだ片付けも掃除も残っている。
「ふるいちさーん」
声のした方を見れば、そこには古市を手招きして呼ぶ山村。
「倉庫掃除と暖炉掃除豆の仕分け、俺達でやっておきました」
「えっ!?そんなごめん!!」
「今ならまだ間に合いますよ!俺達古市さんのためにドレス作ったんです!!部屋来て下さい」
山村に引きずられるまま古市は自分の部屋まで駆けていく。しかし―

「捕まえた」

山村がヨルダに捕まってしまった。
「おかしいなと思ったのよ、何で掃除が終わってるのかなって」
「あなたも舞踏会行こうったって行かせないわよ、役立たずの灰かぶりが汚いまま舞踏会なんて場の空気悪くするだけ」
「ちゃっかりドレス作る暇あるなら髪やってよ」
二人のお姉様も居る。
「挙げ句ネズミまで放置って…」
手に持つ籠には動物達が入れられていた。
ヨルダは溜息を吐く。
「この部屋鍵掛けるから」
そう言いドレスを暖炉の中に放り込んだ。古市はただただ呆然とするしかできない。
ガシャンと音がして、古市は部屋の中に閉じ込められてしまった。

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しかし次で漸くあの方登場ですうぃる

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