澪帆さまのメルトダウンの10万打企画に恐れ多くも参加させて頂きました!
しかしこの自分の残念具合ェ…
お題からもずれた気がしますホント申し訳ないです←
しかし澪帆さまの書かれる男古が可愛すぎて可愛すぎて…!!
復帰して下さって本当に嬉しいです!
10万打本当におめでとうございます(^^)

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「おーがっ、くーん!」
朝っぱらからうるさい。
「ガッコいこー」



相合傘にもどかしい距離



「つか古市朝っぱらからうるせー近所迷惑」
「うるさくないし!最近ベル坊の夜泣きは大丈夫なのかよ」
古市と共に学校に通うのは小学校時代からの習慣となっている。それだけ古市貴之という存在は男鹿にとって共に居て当たり前の存在なのである。
ただ小学生じゃあるまいし高校生になっても毎朝呼びにくるのだけは勘弁して欲しい。寝坊しない限りはサボるなんて事は十中八九有り得ないわけだし、一応男鹿といえど世間体というものがあるからだ。
しかし横ににこにこ笑って並び歩く古市を見た男鹿にはそんな彼を怒る事など出来なかった。

左手を腰に当て右手で鞄を持ち肩に掛ける男鹿と、
右手をポケットに突っ込み左手で鞄を持って歩く古市。
その距離、およそ20センチ。

「うげっ、雨」
誰の声だろうか、しかし自習中の教室には充分伝わった。
サアサアと降り注ぐ雨の音。
古市は雨という天気は案外嫌いでもなかった。小学校時代は外で遊べなくなるなど不便はあったが高校生にもなると雨の音を聴き心が落ち着く事もあるからだ。
大抵その時は丁度男鹿と喧嘩したとか色々あるのだが。
「…それにしても、あんなに朝嫌がってたからもしかしたら俺の行動って男鹿には迷惑でしかないのかもな」
当の男鹿はベル坊と共に机に突っ伏している。肩が一定の間隔で上下しているのを見て、彼も彼なりにベル坊の世話を頑張っているのだなと、

そう考えると俺はまぁ確かに男鹿にとっての安眠妨害だ。

放課後。帰り道で尚も雨が降っている。
「傘…あれっ」
鞄の中に折りたたみは入ってなかった。
ざあざあと降り注ぐ雨。
いつもなら帰りも男鹿と一緒に帰り、こういった日にはあわよくば入れて下さいな流れになるのだが、何となくそんな気分にはなれなかった。
現に、男鹿はどこに居るのか…見つからない。
「いいや、濡れて帰ろう」
丁度今日は金曜日。雨は長引きそうだし、走って家に帰る気分にもなれなかった。

「寒っ」
雨は激しく降り注いでる。
そういえば学校で傘借りれたかもしれない、少しふらふらする頭で古市は思った。
教科書類は全て学校に置いてきたからともかく、鞄はもうぐちゃぐちゃだし制服もずぶ濡れである。
「はぁっ…」
軽く溜め息。ホントに男鹿の奴、どこに行ったのだろう?

「古市」
あぁ、余りにも濡れすぎて熱が出たんだろう、幻聴が聞こえた。
「古市、」
男鹿の事が心配すぎて、幻聴として聞こえてきたのだから。
「…バカ古市っ、!」
ガッと後ろから誰かに腰を捕まれる。
こんなんじゃ俺、(まぁ恐らく誰も居ないだろうが)襲われたりとかした時大丈夫なわけ?
「古市貴之!」
いや違う、この名前の呼び方も体温も、

男鹿だ。

「…何で古市お前独りで帰ろうとするわけ?」
「何で俺に何も言わなかったんだよ?」
「普通に声かけてくれれば古市だもん、入れてやるのに!」
「こんなにずぶ濡れだと風邪ひくだろ!体温熱いじゃねぇか!」
「…なぁ、聞いてんのかよ古市、聞こえてんのかよっ」
ぼぉっとする頭を、熱い体温を、冷たく冷やしてくれる雨は降ってこない。
後ろからの心地いい温もり。
眼に映るのはがっつり前で組んだ両手と傘の柄。
「…男鹿ぁっ…」
古市の頬を温いものが伝った。

「そんなくっつくなよ、男鹿の制服濡れる…!!」
「うるせーとっとと歩けよ」
男鹿は古市の腰を自分の方へ引き寄せ、ただひたすら歩く。
傘も小さいからと、自らを犠牲にしてでも濡れないようにと、古市の方へ傾けていて申し訳ない気持ちになる。
申し訳なくなって、あと余りに近すぎて、隙あらば男鹿から離れようとするが男鹿は尚の事力を強めて離さない。
その距離、在って無いようなものだ。
「…男鹿、こんなん他の人が見たら…!!」
「は?他人なんかどうだっていいじゃん」
「だって朝呼びに来るのが嫌だって言ったじゃん…!!」
男鹿を見上げて睨む。
男鹿は歩みを止め、古市の眼を見つめ返した。
「馬鹿古市、声もう少し小さくするとかしろって事だよ!」

寧ろ俺は古市が居なくなる事の方が嫌だ

ぼそりと呟いた内容は俄に信じ難かったが、耳元にかけられた吐息が妄想ではない、現実である事を証明した。

雨は止まず、音を立てて静かに降り注いだ。

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