中高と帰宅部であったわたしは、マンネリと化した青春時代を送ってきたように思われる。同年代の男女が爽やかに汗を流して練習やら恋愛やらに勤しんでいる間、直帰して自室でグータラしていたのだから、まあ、当たり前だ。かといってわたしにもそういった体験を羨む気持ちがないというわけではない、というか、ある。くすぶっている。そういうわけで、大学生になったあかつきには何らかの部活やらサークルやらに加入し、遅ればせながら青春の仲間入りを果たしてやろう、そう決めたのが、高三の夏。
地獄の受験シーズンを切り抜け、目当ての大学生へと入学が決まったわたしは早速その目標を果たすべく、入学案内に同封されていた部活・サークル紹介の冊子の熟読を始める。まず、体育会系というのは必須事項。そして、男女の出会いを目的としていない、わりと本気でスポーツがしたい人が集まるものであること。まあ、恋愛したいのならばそういった集まりが手っ取り早いのであろうが、わたしは青春がしたいのであって、何らかの目標に向かって一丸となり、汗水垂らして特訓するという、王道のアツい展開を体験することが第一目標なのだ。恋愛はその折々に挟まってこそである。
…とまあ、わたしの自論はここまでにして、結局どれを選んだかといえば、男子バスケ部のマネージャーである。風の噂で聞いたところ、今年の入学生には高校バスケ界を大いに盛り上げた強豪校のスタメン出身者が数名いるとのことで、部は大盛り上がりなのだそうだ。うん、いいじゃないですか!すごくやりがいがありそう!というわけで、数多の勧誘をすり抜け、バスケ部への入部申請を提出したわけだ。











結論からすると、わたしの選択は大正解。高い望みに向かい奮闘する部員たちに、そんな彼らを全力でサポートするマネージャーの図は、まさしくわたしの理想であった。ほんと、毎日がハリのある充実した日で、入部してよかったと心から思っている。
今日は、次の試合に向けて練習後にも自主練を続けた同級生についていたせいか、いつもよりずっと遅い時間になって帰路についた。まあ、文句とかは一切ないけれど。「二人とも、お疲れ」汗まみれの彼らにドリンクを渡す。一人は「さんきゅ、」そう言い笑ってボトルを受け取り、もう片方は無言で無愛想にボトルを受け取る。正反対な二人だけど、バスケではいいコンビっていうんだから、奥が深いよね。

「つーか、わりーね、こんな時間までつきあわせちゃってさ」
「え?いいよ、わたしが好きでやってるんだから、気にしないで」
「んー、でもさ、親とか心配しねえ?」
「大丈夫、わたし一人暮らしだし」
「えっ、マジ?ってそれもまた、危なくね?」

愛想のいい方、高尾がそう焦ったように言うので、わたしは首をかしげた?危ない?何が?「いやだって、一人ってことじゃん?帰り道とかで変なのにつけられてさ、襲われたらどーするよ!」そんな物好きいないって、高尾は深読みしすぎだよ、そう笑えば、「あまいなー、そんな物好きもいるんだって」そう、すこし怒ったような彼に諭される。そうかなあ?

「ところで、どこ住み?」
「ん?んーと、駅の近くの、デザイナーズマンション」
「ああ!あそこなーって、えっ?あんなオッシャレなとこ住んでんの?」
「ふふん、いいでしょ!高校時代、バイトで貯めた資金でちょいとね!」
「うはー見越してんなー」

なんて、高尾と他愛ない会話を交わしていると、もう一人、緑間君はとっくに帰宅の準備を済ませていたらしく、「俺は先に帰るのだよ」そう言うと、エナメルバッグを肩に下げ体育館を後にしようと歩き出したではないか。あ、愛想ねえな…。そんな彼におー!また明日なー!なんて声をかける高尾。…愛想いいな…。

「んじゃ、俺らも帰りますか!」
「あ、うん、おつかれー」
「ってオーイ、何一人で帰ろうとしてんの?!」
「なんで?」
「いやいや、今までの話の流れ的にさ、送るっしょ、フツー!」
「………え?!いいよ別に!真っ直ぐ帰りなよ!疲れてるでしょ!?」
「だーいじょうぶだって!駅の近くってんなら俺も通り道だしさ」
「いや、でも!」
「はいうるさーい、だまって送られてりゃいいんだって!」

というわけで、強引にも高尾に送られることになったとさ。

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