×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


胡蝶姉妹の屋敷で働く女の子達は、最初は突然客人の一人であった早苗から雑用の仕事はないかという申し出を断った。
しかし、身丈がある早苗が高い所にある物を取ったり、率先して家事手伝いをしたりすると、憧憬の目で見るようになったのはきよ・すみ・なほの三人娘である。

他に三人娘より年長の女の子が二人いるが、彼女達は早苗にはまだ心を開いてないようである。
一方は早苗は客人らしくしていればよいと厳しい口調で言うし、もう一方はそもそも早苗に興味がないのか話しかけても無反応である。

「しのぶ様も、こちらのお客様にお手伝いをしなくてもよいと仰って下さい!」
「私は最初から言っていますよ。なのに、早苗ちゃんも頑固だから…」
「…だから、客人じゃないって言ってるだろう。
俺もカナエさんにお世話になったし、この屋敷の皆と一緒に分かち合いたいんだ。

…自分の母には、ちゃんとした葬儀が出来なかった。鬼に食べられて何も残らなかったから、カナエさんと最期まで寄り添いたいんだよ」
「…そうでしたか、あなたも」

今まで鋭い目付きで見ていた女の子も、早苗の事情を知るとどこか刺々しい雰囲気はなくなる。

「…ということで、しのぶさん。
喪に服す間はここに泊まるから」
「…はい、分かりましたよ。」



屋敷から離れた所にある墓地に、しのぶを筆頭に屋敷で働く女の子達、そして早苗が辿り着いた。
みな顔を涙で濡らす中、一人戸惑った表情をする女の子に早苗は視線を向ける。

「…」
「…カナヲ。寂しいよね、悲しいよね」

しのぶが優しく声を掛けるものの、カナヲと呼ばれた女の子は無言のままだ。しかし、ひどく動揺しているのは表情を見れば分かるので、彼女なりの悼む気持ちは伝わった。

「… 早苗ちゃん」

しのぶが早苗にも手を伸ばし、カナヲや女の子達も一緒にその腕に抱き込むので早苗はじんわりと涙を浮かべ、その暖かさに甘えた。


(2/3)