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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


紆余曲折を経て、早苗が鋼鐵塚から刀鍛冶の一職人と認められるようになった。

十三になった早苗は日に日に成長し、端から見ても見目麗しくなった。幸か不幸か、初潮を迎えても女性らしい身体付きにはならなかった。

街に下りれば、異性の格好をした早苗の容貌に惹かれた同性の女性達に言い寄られる様に苦笑いするしか無かったが、その格好をしていれば白い目で見られる状況が減ることにも気づいた。
それを逆手にとって、早苗は上手く女性達をあしらう身振りを覚えた。そうすれば、自ずと情報も入ってくる。
生活圏が刀鍛冶の里にほぼ限定されている彼女にとって、一ヶ月に一度街に下りることはまたとない機会となった。


****

ある日、一羽の鎹鴉が報せを届けた。
"胡蝶カナエ、任務にて殉職せり"と。

一報を聞いた早苗はまず耳を疑う。鉄を熱する作業中であったので、槌を置いた。

「胡蝶カナエ死セリ。ソノ妹、胡蝶シノブカラ伝言。"オ館様カラノ葬儀ノ出席許可アリ。出欠ノ意思、コノ鴉ニ伝エヨ"」
「…出席をします、と伝えて」

鴉が飛び去るのを、早苗はぼんやりと見守った。
鋼鐵塚が声を掛ける。

「…知り合いか?」
「そうです。…すみません、暫くお暇を頂きたいです」
「わかった。ちゃんとお別れしてこい」


翌日。
隠に引率され、早苗がやってきたのは2年前に訪れたきりの胡蝶姉妹の屋敷であった。彼女を迎えたのは、しのぶだった。

「お久しぶりです、しのぶさん」
「…驚いた、見違えたわね。
さ、どうぞ。入って」

しのぶの後を着いていく早苗は、ある部屋に案内された。
部屋の真ん中に棺が置かれている。
しのぶが歩を進む中、早苗は動きを止める。

「…姉さん。早苗ちゃんがご挨拶に来てくれたのよ」

しのぶは棺の縁に手をかけ、そう言うと早苗に横に来るように促した。
ゆっくりと早苗はしのぶに近づき、棺の中をようやく見た。

「…カナエさん」

静かに眠るその姿に、早苗はゆっくりと悲しみが身体に広がっていくのを感じた。

「…姉さん、あなたのことをずっと気にかけていたから。忙しいのは分かっていたけど、どうしても荼毘に付す前に会わせてあげたくて…」
「…こういう形でも、カナエさんと会えてよかった」

早苗はカナエからしのぶに視線を移す。

「これから忙しくなると思うから、よかったら手伝おうか?力仕事でも何でもやるよ」
「はい?あなたは客人として呼んだのですが…」
「いいって、いいって。
この屋敷にいる間は客人じゃなくて、カナエさんの友達ということにしておいてくれ」
「あっ…ちょっと!」
「お〜い!何か手伝えること、あるかい?」

ずんずんと床を踏み鳴らしながら、隈無く屋敷内を進んでは手伝うことはないかと尋ね歩く早苗に呆れたように溜息をつくしのぶだった。



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