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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


職人はみな孤独、という小鉄の父親から飛び出してきた言葉は強く早苗の印象に残った。そして、物事に興味を持つことという言葉も同様だった。

鋼鐵塚は自分の刀剣に誇りを持っているからこそ、傷をつけた隊士には深い恨みを持ち、彼らの元を訪ねては反省の弁を聞くまで追いかけ回すという話である。
それ程まで、自分の作品に愛着があるかどうかは早苗はまだ自信をもって言えなかった。

「…鋼鐵塚さん」
「あ?どうしたよ?辛気くせぇツラしやがって」
「先日の、俺の作った鍔をもう一度作り直したい。納得出来ない」
「…駄目だ」
「は!?何で!?」
「大方、誰かの入れ知恵が入ったからやり直してぇってゆーだろ?あれはあれでいいんだよ」
「…」
「お前は人の言うことは素直に聞けるが、てめー自身の言葉だったり、作ったものに対する思いが薄すぎる。人によく思われたいというのは、この作業をする時にやめな。反吐が出る」
「…あんたに何が分かるって言うんですか」
「…なに?」

勢いよく立ち上がった早苗は、鋭い目付きで鋼鐵塚を見下ろす。しかし当の本人には微動だにしない。

「人によく思われたいと思ってやっている訳じゃない…!俺の心のままにしていることに口を出すんじゃない!!」
「…落ち着け」
「落ち着いてられるか!」

早苗は腸が煮えくり返るような、我を忘れるくらい怒りに呑まれていた。
そんな早苗の心情を知って知らでか、鋼鐵塚は立ち上がったかと思うと勢いよく彼女の頭を叩く。

「痛ってーな!!何すんだ!」
「いいから座れ!」

鋼鐵塚からそう諭され、渋々と早苗はしゃがむ。

「…お前の作ったやつは、よく出来てたって言ってんだよ。作り直さなくていい」
「…鋼鐵塚さん…」
「よくやった、と言うべきかな。
感謝しろよ、この俺が認めてやったんだから」

早苗は真っ直ぐ鋼鐵塚を見つめ、そして深々と頭を下げる。

「…ありがとうございます。やっと自信がつきました」
「せいぜいこれからも頑張んな」
「…俺、この仕事をして思うんです。

この里に来て、手を動かすのが一番楽しいということが分かった。
鉛さん達の中に混じって台所周りの作業をした時も、鋼鐵塚さんの所で初めて炭を焼いた時も、鑿で初めて木彫りをした時も。

…どれも、私が生家で出来なかったことなんだ。炭を焼く時に、どうやったら上手く火が長く着いてられるかなんて自分が考えたことがなかった。だって全てお世話係がしていた。
そういった世の理なんてつい最近まで知らなかった。

この里で、自分からやりたいと思えるような仕事に出会えてよかった」
「よし。じゃあ明日からこき使っていくからな」
「それとこれとは話が違ーう!」

見当違いなことを言う師に、早苗は呆れながらも大きく口を開けて笑った。



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