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「…」
「承太郎はワシの娘の子、つまり孫であるけれど日本で生まれ育ったから英語は得意じゃあなかった…。

最初の頃は、兎に角四苦八苦したもんじゃの〜」

昔の事を思い出しながら語るジョセフの顔は、孫を慈しむ祖父そのものだ。
承太郎そして仗助も、ジョセフと血を分けた家族なのだと美登里は改めて思った。

「そっかぁ…、承太郎さんの小さい時のこともジョセフさんは知ってるんですよね」
「そうじゃよ。あれは彼奴が4つの頃…」
「…おい、じじい。
余計な事は言うんじゃあねぇぜ」
「すまん、すまん。承太郎…」

今まで黙って聞いていた承太郎から突然掛けられた言葉に、咄嗟にジョセフは謝る。
承太郎は書類に向けていた視線を、ジョセフや美登里の方に投げていたが暫くすると徐に立ち上がった。
そして少し出ていくと告げると、そのまま部屋から出ていってしまう。

「…承太郎さん、気分を害されてしまったんでしょうか…?」

残された美登里は不安げにジョセフにそう問う。
彼の身辺に深く入り込んだ質問をしてしまったのではないかと、余計にそう思ってしまう。
そんな彼女にどうという事はないと言う様に、ジョセフは首を振る。

「承太郎の悪い癖じゃの…。
大丈夫、心配せんでも、あいつは気にしておらんよ。

ただちょっとばかり昔の事を話しているのを、恥ずかしがってるだけじゃ」
「…はい」

ジョセフのさりげない身内への気遣いの言葉は、美登里にも安心感を覚えさせた。
そして、ふと仗助ともゆっくりと順調に親子としての絆をこんな風に築いている事だろうと、美登里は思った。


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