その後、青年はデスクに再び向かい作業に没頭する。
青年に背を向けられている今、逃げ出せる機会であるものの身体が微動だにしない事に美登里は気がついた。
せめてスタンドだけは発動しておこうと美登里は
、意識を集中させる。
発動させたスタンドは、うっすらと靄がかかったように実体化して美登里の前に現れる。
実体化したスタンドは美登里と瓜二つの姿形をしている。
試しに自分の手足を動かしスタンドと連動した動きをした所、動作は同じだった。
これだったら一時的に身代わりになれるものかもしれないと美登里は淡い期待を抱いたが、問題は霞みがかった影が人間に見えないという事である。
もう少し鮮明に現れたら、と美登里は悔しがった。
美登里がそう考えていると、背後からずるずると何かを引きずるような音がして思わず肩をはね上がらせる。
音は少し開いているドアの外から聞こえてきて、やがて人影が現れた。
いつのまにか姿を消していた康一が、四つん這いになりながら入ってきた。
彼の顔も、両手の皮も紙切れのようになっており、本のように一枚一枚捲れるような形になっていた。
「ご、ごめん…。
仗助君と億泰君に助けを求めたんだけど駄目だった…。
多分だけど、あの岸辺露伴という人の所為かもしれない…。美登里さんまで巻き込んじゃってごめんなさい…。」
「…康一君が謝る事はないよ。
今はここから抜け出す事だけ考えよう。
あの人見ている限り、これ以上私たちに危害を与えようと考えてなさそうだし…」
しょんぼりして落ち込んだ様子の康一に慰めの言葉をかけて、美登里は相変わらずこちらに背を向けたままの青年に警戒し続けている。
敵か味方かも分からない得体の知れない人物だからこそ、相手がどういう人物なのか見極める事が大事だと美登里は自分に言い聞かせた。
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