「…美登里ちゃんは優しいよ。
だけど自分に関わる奴みんな、心を改めて行動するだなんて思ってないよな」
「…どういうこと、仗助くん」
早人と別れて、仗助と美登里は予定していた場所へと徒歩で向かっていた。
ところが予定外のこともあり、話が弾むことがなくただ黙々と歩いていた。
そんな中、仗助がぽつりと呟いた言葉に美登里は少し胸をざわめかせながら問い返した。
仗助が歩を止めたので、美登里も倣って足を止めた。
仗助はそんな彼女を見下ろして、溜息をついた。その仕草に美登里の胸にちくっと痛みが走った。
「…」
「そう簡単に人を信用しねー方がいいって言ってンの。誰でも美登里ちゃんみてぇに優しくねぇのよ」
「…分かってるよ、それくらい。
それに私だって、信頼出来る人の基準はあるよ」
「…なら、吉良吉影のことはどうなの」
「どうって…。
…さっきも言ったけど、行為は許されないけど改心する可能性があった人だと思った…。
あのね、言っておくけど。
鈴美さんの背中の傷跡を遺した犯人だから、私はずっと吉良吉影のことは許さない。
人の尊厳を奪っておいて、自分だけ平気な顔をして日常生活を送っていただなんて話をきいた時は、怒りが収まらなかった。
…あの人の最期を、鈴美さんから聞いた時は人間として死ぬことは許されなかったんだ、と少し怖くなったけど」
「…」
「…仗助くんの言いたいことはよく分かる。
でも、人って人に認められて、許されて自分のことをやっと肯定出来て、進むべき道を選ぶことが出来るんだと思う。
そう考えたら、変われるチャンスがあったのに結局変わろうとしなかった吉良吉影は可哀想な人だったんだと思う。
…ごめん、変な空気になっちゃったね。
今日の所は解散して、また別の日に仕切り直してもいいかな?」
デートを早めに切り上げて帰宅した美登里は、玄関の扉を開けた途端、しんと静まり返った空気に数日は独りだということを思い出した。
両親はお盆休みに父の故郷に帰省している。
仗助にはいつも通りに接したつもりだったけれど、2人の間に漂う雰囲気が淀むきっかけを作ったのは自分だという自覚があったので、美登里は気が重い感じで帰宅したのだった。
1人で留守番だなんて久しぶりだ…と考えながら、美登里は2階の自室に向かう。
朝は機嫌がよく出かけたのに、今は憂鬱な気分だ。
少し眠ろうと美登里はベッドにうつ伏せで寝転んだ。意識がどんどんと遠のいていくのを感じた。
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