仗助の腕を軽く引っ張る形であったのが、自然と美登里が手を絡ませる様になり2人は並んで歩く。
2人の身長差はかなりあるが、寄り添い歩く姿は微笑ましい。
今日は杜王町を散策してみたいという美登里の要望があり、最初は丘の上にあるアイスクリーム屋に行きがてら街を見渡せる展望台に向かう。
2人の通うぶどうヶ丘高校も丘の上にある。ほぼ毎日通うルートを辿るようなものだ。
緩やかな坂道だが真夏のこの日、体力も心許ない。
坂道を登る前に手を離し、お互いのペースで登っていたのだが、仗助は美登里の方をちらりと窺いみると、彼女は息をゆっくりと弾ませている。
「美登里ちゃん大丈夫か?水買っとけばよかったな〜」
「う、うん。ペットボトル小さいのあるけど飲む?」
「美登里ちゃんが先に飲んでいいよ。辛いでしょ?」
「じゃあ…ちょっと休憩…」
道の半ばで2人は立ち止まる。
美登里が手持ちの茶色のショルダーバッグから水が入ったペットボトルを取り出し、一口飲むどころかこくこくと飲み下す。
とても喉が渇いていたのだろう。
用意周到にされていたのを流石と思うどころか、もう少し彼女の身になって考えればよかったと仗助は少し後悔する。
そんな彼を知ってか知らずか、美登里は今まで自分が飲んでいたペットボトルを仗助に差し出す。仗助はそれを受け取り、残りの分も彼女の為に残す。
「…ここまで体力ないと思わなかったな。
夏休み入るまでは毎日通ってたのにね」
「こんだけ熱いとそりゃあバテるよ。
…もうちょい休憩する?」
「ううん、大丈夫。あともうちょっとだから」
ようやく登り終えた2人は、真っ先にアイスクリーム屋に向かう。
そしてアイスクリームで暑さを凌げた2人は、次なる目的地の展望台に向かう。
展望台にはちらほらと先客がいて、距離を取りながら展望台から街を見渡せる位置を取る。
高台から見下ろす杜王町は、何だかいつもより様子を違うように見える。
恐らくは美登里自身、この街に根付いた証拠だろう。どういう施設があるのか、どういう店があるのか今ではすっかり把握している。
「…どうした、美登里ちゃん?やっぱり具合悪い?」
「…大丈夫。ただ自分でちょっと感傷的になっているだけ…あ、全然悪いものじゃあないよ!?寧ろいい意味で…」
「…そっか」
暫く2人は静かに杜王町の景色を眺めていた。
仗助は設置してある手すりに組んだ腕を乗せ、ぼんやりしている。美登里は手すりを掴んで、同じように何もせずにいた。
「…私、決めたの。まあ前から思っていたけど。
大学も東京じゃあなくてこの付近にしようかなって。
そして杜王町に住み続けられるような仕事に就こうかなと最近思うようになったの。
…不思議だなぁ。ここに引越してばかりの頃は、東京に戻りたいってずっと思ってたのに。今じゃあすっかり杜王町を好きになってる」
「…前に話してたなぁ、そういや。そっかぁ…何か嬉しいよ。
自分のことじゃあねーけど、ここが好きだって言ってくれて」
「うん。…承太郎さんからのアドバイスで、大学の先生になるのもいいかなぁって。
…歴史をね、学んでみたいの。そしていろんな人に広めたい」
「歴史かぁ、… 美登里ちゃんっぽい」
「…私っぽいかぁ、ふふふ。どんな所が?」
「疑問に思った所は、何がなんでも突き止めようとするとこ」
「…そうかぁ、私っぽいのかぁ…。」
仗助の言葉に目を細め、柔らかく微笑む美登里。
市街地に戻ろうと2人は展望台の最寄りのバス停にて、バスを待つ。
バス停には雨風避けの小屋があり、これ幸いと2人は小屋に入る。すると、そこには先客がいた。
「…なんだお前か。人の顔みてすぐ変な顔をするなよ」
露伴がスケッチブックを片手に、小屋にあるベンチに腰掛けていた。露伴は仗助の顔をみて、顔を顰めることを隠しもしない。
「あ、ああ〜お久しぶりッスね〜先生」
「一丁前にデートか。青春してんな〜」
皮肉たっぷりに仗助を揶揄う言葉をかける露伴に、仗助は美登里がいる手前強く言い返せない。
「露伴先生は取材ですか?」
「誰だい、君は?見ない顔だな」
「あ、私、白石 美登里ですよ」
「あっそう」
美登里がいつものように露伴に声を掛けた所、彼は怪訝な顔つきになる。どうやら眼鏡を掛けていないからか、美登里と判別出来なかったようである。
仗助は気にするなと言い、ベンチに座るように美登里に伝えた。露伴が端に座っているので、その反対側の端に美登里が座り、仗助はその傍らに腰掛ける。
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