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「あら、もう学校に行くの?傘持っていきなさいね」

玄関口で自分を呼び止めた母の言葉に、疑問が湧いた美登里は靴を履きながら返した。

「雨なんか降るの?こんないい天気なのに…」
「いいから持っていってよ〜。ビシャ濡れになったら困るのは自分よ?」

渋々と美登里は今履いたばかりの靴を脱ぎ、折りたたみ傘を取りに行くために2階の自室に急いで戻った。
このやり取りを何処かでしたことがあるという考えが頭によぎった。

昨日。興奮が冷めやらない康一から、逃亡している吉良の居場所を突き止めるヒントを得たという話を受けた。
他人に成り代わって、生活をしている彼の行方を追うにはなかなか難しいもので、しかも追っ手を阻むように敵のスタンドが現れる。

そんな状況の中でも、辛抱強く調査を続けていた露伴の行動を美登里は素直に評価した。

吉良の行方を追う一同は、明朝、通学途中に「川尻早人」という小学生に接触するという考えに至った。

露伴が杜王駅に張り付いて道行く人を撮ったという写真の中に、ビデオを持ち誰かを撮影している早人の姿を捉えているものがあった。
その対象は恐らく、彼の父ではないだろうか。
露伴は吉良の年代や身長に近い人物に目星をつけていたこともあり、その中で早人の父親もターゲットに絞っている。

謎が謎を呼ぶ展開に、逸る気持ちを抑えつつ一同は解散した。


家を出て、美登里は途中で康一、それから承太郎と合流しある路地に着いた。
どうやら1番乗りらしい。

炭酸飲料会社の看板が、目の前の建物の屋上にあるので目印となった。後から、露伴、仗助それから億泰も来る。

しかし8時半を目処にということだったが、他に誰かが来る気配もない。雨も降ってきた。
痺れを切らした康一が、ふと路駐している自動車は露伴のものではないかと気がついた。

「…露伴先生?あれ、鍵ささったままだ…」

美登里がコツコツと車の窓を軽くノックしてみるも、露伴の姿がない。おまけにドアが開いた状態で放置されていた。
几帳面な彼がやりっ放しにするのは有り得ないと康一が言うのを、美登里は心配そうな素振りを見せる。美登里は左右を見渡し露伴を探そうとする。

「お〜い美登里ちゃん!康一、承太郎さん!」
「あっおはよう!仗助くん、億泰くん」
「おはよう〜、もう2人とも遅いよ!」

遅れてきた仗助と億泰の前に立ち塞がる1人の人物がいた。
小学生くらいの男の子だ。美登里は彼の出で立ちをみて、すぐに思い出した。川尻早人その人だった。

男の子は何故か逃げ出そうとするので、仗助は男の子のランドセルを掴み、再び引き戻す。
仗助は男の子にぶつかった拍子に落ちた帽子を返そうとしただけだ。

「…ぶどうヶ丘の小等部の子だよね?
雨降ってきたから一緒に行こうか?

私、白石 美登里。君はお名前は何て言うの?」

次なる美登里の問いかけに、男の子はびくりと大きく身体を震わせた。

「ぼ、僕は…」

男の子はある名前を言う。しかし美登里はすぐに嘘だと分かった。

「…君の名前は川尻早人、間違いないな?」

承太郎の言葉に、男の子は無言で頷いた。

仗助と億泰、それから康一は驚いた表情を見せる。
自分に背を向ける早人に、美登里は腰をかがめて優しい口調で写真に映る彼の行動の意味を聞き出そうとする。

しかし早人は言いたくないのか、拒絶する素振りを見せる。
あの手この手で探ろうとする一同に、やがて早人は大声で「それ以上聞き出そうとするな」と抵抗した。

ここまで拒絶するということは、やはり早人自身何かを知っていて、その秘密を暴かれたくないということである。
早人は叫んだかと思えば蹲った。
とても混乱している様子を見せる早人に、彼の1番近くにいた美登里は心配して声を掛けようとした。

しかし、蹲っていた早人がふいに顔を上げこちらを見るのでつられて美登里も彼と目が合う。
そして彼の喉元にいたものの姿を目が捉えた。


ーーーー遠くの方で、目覚まし時計の針が鳴っているのが聞こえる。
美登里はゆっくりと身体を起こし、時計を止めた。
いつもと変わらない朝だ。…なのだが、どこか晴れ晴れとしない気持ちになるのは何故だろう。



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