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美登里は異変に気づいた。
帰宅するなり、家の中がいつもの様子と違うと察知した美登里は、静かに音をたてずに玄関からリビングに向かう。

しんと静まり返るリビングには誰もいない。
しかし、確かに誰かがいるということを美登里は勘づいていた。

「…お母さん、いるの?」

美登里は問いかけるも、返すものは誰もいない。
すると突然ゴトンと大きな音が背後から聞こえてきた。
不気味な静けさの中、美登里は唾を飲み込んで勢いよく後ろを振り向く。

みると、台所に常備している砂糖の瓶が落ちてしまったようだ。床に広がる砂糖の粉を拾うべきか迷うほど、美登里はこの雰囲気に呑まれてしまった。

すると、今度は常備している調味料の棚がぐらぐらと揺れだした。
咄嗟に美登里はスタンドを発動し、棚の骨組みを複数の影の手で押さえた。
…やはり何かおかしいと美登里は思い、スタンドは解除しなかった。

「…異変に気が付きスタンドは解除しない、か…。
勘のいい女は嫌われるぜ?」

再び背後から、今度は声が聞こえてきたので美登里は後ろを振り向く。
日焼けした肌に白い髪を持つ青年が、悠々とリビングのソファに腰掛けている。

発言や出で立ちからして、友好的な人物ではないと美登里は判断した。

「…貴方、スタンド使い?」
「君には質問する資格はない」
「…人の家に、勝手に上がり込んだ人の言うことじゃあないでしょう。」

美登里がそう言い返すと、青年は睨めつけるようにこちらを見やる。
鋭い眼差しだが、親が恐らく人質にとられている美登里としては、怖気つくものではない。

暫し沈黙が漂う。

「…電話はどこにかけるつもりなんだい?」
「…貴方には知る資格はない」

青年から指摘された美登里は一瞬驚くものの、すげ無く彼にそう返した。
美登里は隙を見て、仗助や承太郎か近所に住む康一に電話で1コールをし、助けを呼ぼうと影を伸ばしていた。

「…」
「…どうして分かったのかと言いたげだね。
君の家はもう僕のスタンドの掌中にあるんだよ」

青年は言うと、1枚の白紙をズボンのポケットから取り出した。
2回折りたたまれたその白い紙は、何の変哲もない。
しかし、その隅に何かが書かれているのが分かった美登里は目を見開き、唾を飲み込んだ。

「…もしかして、その紙に私の両親がいるの…?」

美登里の言葉に青年は初めて口角をあげ、笑った。

「ははは…!そうだ、そうなんだよ!
僕の能力は、人やものを紙に封じ込めることが出来る…発動の条件は、対象となるものの恐怖を知ること…」

青年が言い終わる前に、美登里はこの場から離れようとするも既に青年の術中にはまってしまった後だった。
残されたのは、家主が不在のままの戸建て住宅とスタンド使いの青年だった。


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