それから、とある土曜日の夕方。
仗助は今度は朋子と連れ立って、美登里の自宅を訪問した。
美登里の母が、2人を自宅での食事会に招待したのである。
2人が訪れると、美登里の案内で居間を横切りバルコニーに通される。
庭に突き出された形で建つバルコニーは、六角形の屋根を持ち天井は高い。
こんな風に食事をとるのは滅多にないんだけどね、と美登里は言う。
どうやら、夕涼みをしながら開放的な空間で食事をと白石家はおもてなしをしてくれたようだ。
2人を案内した美登里は、そのまま仗助らとともに食事が運ばれてくるのを待つ。
最初に食事を運んできたのは、美登里の父親・博己だった。香ばしい匂いがそそり立つ、パエリアであった。聞けば、彼自身が作ったという。
それを先頭に、次から次へと運ばれてくる料理に舌づつみをうった。
大人達はアルコールを片手に、仗助と美登里はこじんまりと会話をしながら食事を楽しんだ。
メイン料理を食べ終え、ゆっくりと食後のデザートも味わっていると、博己がふいに立ち上がったかと思うと仗助を呼ぶ。
急に呼ばれた仗助は驚き、咄嗟に動けなかったが、博己が先に家の中に戻ったり、美登里に促されたりしながら、仗助は博己の後に続く。
博己が向かった先は、書斎であった。
こじんまりとした小部屋だが、机を挟んだ両隣の棚には数々の本が置かれている。
博己は部屋に入ると、向かって左側の棚で何かを探しているようであった。
手持ち無沙汰になった仗助は、些か居心地悪くなった。
博己とは何度か話したことがあるが、それはたった一言や二言である。
暫く2人の間には無言が続くが、やっと目当てのものを見つけ出したようで、博己は棚からある物を取り出す。
蓄音機で音楽を聴くような、ヴィンテージもののレコードである。
「… 美登里から、君は音楽が好きだと聞いてね。古いレコード物だが、良かったら聴いていってくれ」
「…ありがとうございます」
仗助の言葉に博己は頷き、レコードを蓄音機の針にかける。
蓄音機はゆったりと歌を紡いでいく。
博己は仗助に椅子に座るように促し、定位置の窓際にある革張りの1人用のソファに腰掛けた。
促された仗助は、ソファの横にある細長い脚を持つスツールに座る。
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