「…私のスタンド能力の発芽は、今年2月のある寒い、雪が降るような日でした。
スタンド能力に目覚めると発熱を伴うということなので、逆算したらその日だということになります。…何がきっかけなのか、よく分かりません」
「…そうですか。スタンドというのは、本体つまりあなたの精神が形作られたものだと認識してもいいでしょう。
…よって、あなたの身辺についても詳しく調査をしなければならない。あなたが知らないあなた自身を、スタンドが唯一知っている」
美登里はその言葉に少し動揺した。
「…調査方法は、私の横にいる岸辺露伴さんのスタンド能力が適切であるかと思います…。」
美登里はそう言うと、左側に腰掛けている露伴を見つめた。露伴は何も言わず、彼女を見つめ返す。
露伴がスタンド"ヘブンズ・ドア"を発動させると、美登里の意識は僅かばかり混濁した。意識の外で、露伴が美登里の人生を読み上げる声が聴こえる。
"…はじめておるすばんをした日。パパとママがかえってくるまでいい子にあそんでなきゃ。
くらい、かみなりがなった、こわい、こわい…"
"おへやのすみっこにいると、友だちがあそんでくれた。もうこわくない。"
"ママがかえってきたら、友だちはかえっちゃった。またあそんでくれるかなぁ"
「あ…そういえば…」
混濁した意識の中、美登里はぽつりぽつりと言葉を返した。露伴は読み上げる作業を中断する。
「…お留守番をして心細くなった時にだけ現れる友達がいたなぁ、って今思い出しました。
思えばそれって、スタンドだったのかもしれないんですね…。
私のスタンドは自分の影なんです。だから気がついていないだけで、ずっと傍にいたのかもしれない…って今は思います。」
「では、あなたのご両親や親戚に同じようにスタンド能力を操る人物はいますか?」
先程とは別の人物の声である。
「…いえ、いません。」
一瞬置いて露伴が美登里の履歴を読み上げる。
"父・博己は広島出身、早くに両親を亡くし苦学の末に裁判官になった。母・美すずは沖縄出身、貧しい家庭に生まれ、高校を卒業すると上京してくる。偏見の目をくぐり抜け、裁判所書記官となり、博己と出会い結婚する。
博己26歳、美すず28歳の時に第1子の美登里が誕生する。"
「彼女の両親についての記述はこれまでです。
詳しく知りたいなら、彼ら本人にスタンドを使うしかないでしょうね」
「…ミス・白石、ミスター・岸辺。ご協力ありがとうございます。」
「こちらこそ、貴重な経験をいただいてありがとうございます。…お役に立てられたなら、いいのですが」
露伴のスタンド能力が解かれ、美登里は少しだけぼんやりとしながら職員の言葉に返す。
「…スピードワゴン財団は創立者ロバート・E・O・スピードワゴンが、かつての旧友であったジョナサン・ジョースターとその家族を影から支えたいという一心により立てられた組織です。
表向きは医療事業団としていますが、…その実、あなた方スタンド使いの実態についても調査している団体です。」
「…」
「…ミスター・空条やその他にスタンド使いが傍にいても、何かと秘匿することも多いでしょう。
ここで出会えたのも何かの縁。困ったことがあればご相談に応じます」
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