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重ちーの突然の殺害事件は、美登里だけではなく仗助や億泰にも暗い影を落としていた。
直接重ちーと会話がしたことがない康一は、3人の雰囲気に何と声をかけたらいいのか分からない。

心配そうに動向を見守る康一に、これからはより一層気を引き締めなければと仗助は決意を新たにする。

まず手がかりとして重ちーのスタンドが遺してくれたボタンである。
見たところ何の変哲もないボタンだが、血まみれになった重ちーのスタンドが持ってきてくれたこと、ぶどうが丘中学・高校の制服に用いられていないことから、外部の人間が重ちーを襲ったと予測出来る。

その事から犯人は恐らくボタンが取れたことを気にして、服を街の仕立て屋に預けるだろう。と仗助は考えを口にした。


生徒1人が失踪したという事実は学校側にも伝わり、美登里のクラスメイト達も心配そうにその話題を口にする。
重ちーの足跡が不明だということで、一般的に社会の中では行方不明者として扱われる。
ただ彼が亡くなったという事実は仗助、康一、億泰それから美登里のみが知っている。

跡形もなく重ちーの存在を葬り去った犯人は、一体どこに身を潜めているのだろう。
答えのない疑問は青年達の心を揺るがし、犯人の手がかりとなるものを追求しようという思いに繋がっていた。

*****

アルバイト先であるカメユーデパートの従業員による臨時出勤の要望に美登里は応じ、放課後になると出勤し持ち場についていた。

日にち毎に担当場所は変わるが、今日はギフトカウンターに配属された。
もうすぐ中元の時期である為、通常よりも仕事量は多く人の手を借りたいという状況である。

贈答品の問い合わせ、説明は社員がしてくれるが、商品の承りはアルバイトを含めて受け持っていた。
覚えることはその分多く、社員から備品を持ってくるようにと依頼されると、少しだけ一息つけると僅かばかり美登里は安心した。

地下にある従業員用通路をいくつか通り、備品のある棚に美登里はたどり着いた。
多くの備品が店舗ごとに棚で分けられて、同じように所狭しと置かれている。

売り場は洗練された装いだが、バックヤードに入ると一転して変わる。
照明もやや暗く、初めて足を踏み入れた時はあまりのギャップに美登里は驚いた。
しかし次第に一スタッフとして関わるようになると、この風景も日常の一つとなった。

こほんと咳払いをし頼まれたことを思い出しながら、棚にある備品を詮索する美登里であった。

およそ10〜15分経った頃だろうか。
依頼された種類別に分けられた包装紙の枚数を数えていた美登里だったが身を屈めて作業をしていたので、少し痛みを感じ一度手を止めた。

ストレッチをして、さあ作業に戻ろうとしていた彼女に誰かが声をかけてきた。

「…お疲れさま。雑用続きで疲れただろう」
「…あっ、お疲れさまです。
そうですね…慣れないことなので、少し疲れちゃいますね。」

ふいに背後からかけられた言葉に反応して美登里が後ろを振り向くと、つい先日食堂で遭遇した社員の男性だった。
出で立ちからして気品が漂うものだったので、美登里の記憶には鮮明に残っていた。

労いの言葉をかけてくれた男性に対して、少し有難みを感じ美登里は正直に自分の気持ちを述べる。
男性は美登里の言葉を聞くと、同意だというように頷く。

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