週末の土曜日。
規定の時間より少し前にアルバイト先に出勤した美登里は、時間になるまで食堂で待機していた。
アルバイト先のカメユーデパートは、東北地方を中心に展開している老舗の百貨店である。
ぶどうヶ丘高校出身の従業員が何人か在籍しており、就業体験の一環として短期アルバイト先として選ぶことも認められている。
働き初めてから間もないが、「働く」ということの大変さを美登里は体感した。
その上で進路先の1つとして、このデパートで従業員として働くことを候補にあげるのもいいかもしれないと彼女は思っていた。
時計をみてそろそろ担当場所に行かなければと美登里は椅子から立ち上がり、食堂の出口に向かう。
お昼時で賑わう中、やっとの思いで出口に辿りついた彼女とほぼ同時に、ドアを開閉して食堂に入ってきた男性とばったり行き合ってしまった。
突然開いたドアに一瞬だけ驚いたように身を固めた美登里に、男性は突然開けたことを詫びをいれ、そして大丈夫かと問う。
男性の問いかけに美登里も恥ずかしそうに返すと、彼はそのままドアを押さえて美登里が通りやすいようにする。
その行動が紳士的に思え、美登里は憧憬の念をもって彼を見つめる。
男性は細身に品の良い紫色のスーツを着こなし、ウェーブがかかったブロンドの髪もとてもバランスがとれたアクセントになっている。
風貌に見とれてしまったことに気づいた美登里は、男性にお礼を言いその場を後にした。
「じゃあ美登里ちゃん、また明日。気をつけて帰るんだよー」
「はい!先輩もお気をつけて〜!」
退勤となり従業員出入口で先輩達と別れた後、まっすぐ家に帰ろうかとしたが何か飲み物が欲しいと思い立った美登里は、デパートからほど近いコンビニエンスストアに立ち寄った。
自動扉に近づいた所、中から仗助が現われたことに美登里は一瞬身を固くした。今日はよく人とばったり鉢合わせしてしまう日だなとも思いを馳せる。
いつも見慣れた制服姿ではない、私服姿の仗助は片手にビニール袋をぶら下げている。自慢の髪型は崩さない彼に、どこか安心感を覚える美登里だった。
「おっ美登里ちゃん。今帰り?」
「う、うん。アルバイト終わったから、何か飲みたいなーって思って…」
「そっかー。オレも何か買い直そうかな」
そういう仗助につられて美登里も店の中に入っていく。
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