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「#溺愛」のBL小説を読む
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不思議な小道での一件から数日後。

あの後、図書館で該当する日付の新聞を調べてみたところ、不気味な一家殺人事件として扱われている記事と共に被害者の1人に杉本鈴美という名前をみて、あの日聞いた話は事実であったのだと美登里は改めて実感した。

日常ではごくごく普通の高校生らしい生活をしているが、時々あの小道で遭遇した出来事を思い出しては、美登里はとても胸が締め付けられるような悲しみを感じる。
何故これ程まで過去の人物に気持ちを寄せるのか、自らの感情の揺れ動きに彼女は戸惑いを覚えた。



ぶどうヶ丘高校では1週間前から1年生全体で個人面談が始まり、美登里も来週に控えている。
いつも一緒に遊ぶ女友達との放課後の話題は、少し先の将来について話すことが多くなった。
多くは地元の杜王町から上京したいという希望が聞かれたが、これについて美登里は最近悩みの種となっている。

生まれ育ちも東京だった彼女が大学進学を期に、慣れ親しんだ東京に戻る事は必然の事のように思うのだが、選択肢の1つとして杜王町に留まることも考えるようになった。
何故杜王町に留まるのかと聞かれたら、自分の雰囲気にあった場所であるからと簡潔に答えるのみであると美登里は決めていた。

「美登里ちゃんが杜王町が好きだって言ってくれるなんて…何だか照れちゃうよね」
「でも嬉しいな。正直ね、東京に戻るって言われたら寂しいし」

暑さを鎮めるためにオーダーした炭酸ジュースを一口味わった後、美登里は2人の親友の言葉に耳を傾けていた。

「…本当はね、転校してきた時は大学は東京の大学って思ってたんだけど。段々、杜王町の雰囲気が好きになっちゃったの。

何も東京に拘る必要はないかな、って。それに満員電車はもう懲り懲り」

最後に皮肉っぽく美登里が言うと2人は納得したように頷き、くすくすと笑いをこぼした。

「美登里ちゃんがここに留まってくれるならよかった。私は高校卒業したら働くけど、またいつでも遊べるし」
「…知恵ちゃんはお家の仕事を手伝うんだっけ?」

自分の言葉に頷く知恵に、美登里はふと自分は将来どのような職種に就こうとしていたのかすら思い描けていないことに気づいた。

東京にいた頃は特に疑問もなく、ただ淡々と父親に言われるがまま、美登里は課題をこなすのみだった。
杜王町に引っ越してからは自分自身と向き合うようになったが、人生の岐路に立つ状況の中で果たして自分の興味があるものは何なのかと、彼女は改めて意識をするようになった。



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