小説 | ナノ

シュートをきめれば、敵をブロックすれば、ドリブルが成功すれば彼女にむかってピース。これがお決まりだった。勝ったらまず皆に、そして次は俺におめでとうと言う。そして抱き締められる。このハグは俺だけ。可愛い可愛い彼女が嬉しそうに笑うからシードとしての仕事も頑張れている。浪川はそういうのがなくても頑張っちゃってるけれど、俺は見返りがなくては頑張れないタイプだったんだ。
だから彼女と約束を決めた。どんな試合でも一点入れればハグ、二点でキス、三点で湾田くんでなく名前呼び。そして五点で、まあ恥ずかしいから割合する。この約束は俺を奮い立たせて仕事もスムーズに進んだ。

雷門に負けても彼女は変わらず俺たちを応援してくれる。大好き、の言葉も口にするのは恥ずかしくてなかなか言えないけれど、彼女がこちらに向かって頑張って、と言われる度に彼女からの大好きをひしひしと感じた。

ある日の試合の前、他のチームメイトたちがグラウンドに走った後、マネージャー席の彼女にだーいすき、だぜ?って囁いてみた。彼女は顔を真っ赤にして、俺は監督に拳骨を喰らった。


.