小説 | ナノ

話があるの、と呼び出された。多分告白だろう、今までも数回あった。俺を呼び出した彼女は緊張している面持ちで俺の方を向いていた。恥じらった顔が可愛らしい子だった。彼女はもじもじしながらじっと俺を見る。そんなに見られると多少は照れるもので、俺も少しだけ緊張した。
あのね。そう言った彼女にうなずく。向かい合った彼女は俺にこう言った。

「龍崎くん、て、テディスと会わせてほしいの」

思っていた言葉と違う言葉に戸惑う。なぜテディス?なぜテディスなんだ?と疑問ばかりが頭を通っていった。彼女は恥ずかしそうに、テディスに一目ぼれをしたの。と告いだ。面白がって着いてきて、なお隠れている帝国サッカー部の面々が噴き出しそうな勢いで静かに笑っていた。それはそうだろう。昼休みに呼び出された。たぶん告白だ。お前らざまあないな。と豪語していたのは俺だから。告白は告白だが少しレベルが違っていただけだ、俺は間違っていない。

「テディスね、格好いいでしょう?」
「はあ」
「雷門との試合の後、ずっとテディスが頭から離れないの」

嬉しそうに語る彼女は可愛いけれど嬉しくはなかった。俺への告白だったら、良かったのに…そう思ってももう遅いようで、彼女は俺にはやくはやく、とまくし立てた。
ああ、テディス。どうしたら良いのだろうか、俺は。

その後事あるごとに呼び出されて彼女とテディスの逢瀬を手伝うのは、言うまでもないと思う。


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