小説 | ナノ

先輩は面倒くさい女だと思う。好きだよって言わないと怒る。怒るというか拗ねる。そこが面倒。しかもキスだってねだってくるし、ぎゅうって抱きしめないといけない。サッカーやってるから臭いかもしれませんよって言ってるのにそれでも抱きついてくる。かわいいって思うけれどその場だけ。やっぱり疲れるって思う。なのに俺と先輩は付き合っていて、世間では校内公式カップルとうわさまでたってしまった。霧野先輩にさえよくお前ら仲いいな、なんて言われて。その度に、ええまあ。なんて会釈するのも億劫だ。ほんとうに恋人って面倒くさい。

「そんなに面倒なら私と別れる?」

そう一回言われたことがある。それでも別れなかったのは、絶対先輩泣くし気まずくなるのは嫌だった、から。先輩が泣いちゃうと思うので別れるわけないですよって言ったら彼女はうれしそうに笑った。意味わからない。

それに別れたあと、先輩に名前で呼んでもらえない、もう抱きしめたりもキスも好きだよもできないって思ったら、少しだけ寂しいと感じた、なんて。絶対に言えない。


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