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2000年1月某日



チーム・THE 蓮の試合が終わった後。
少女と深く関わりのある者達はそれぞれの思いを抱え、この狭い無人島で散り散りとなっていた。

かつてお茶会をした思い出の場所へと向かう子供達。
しこりを残したままの蓮達。彼らを待つアンナ。
修行をする葉達・ふんばり温泉チーム。

束の間の時間でさえ、あの少女を思わない時間はない。
その命を散らすまでに遺していった、たくさんの思いと言葉。

皆の胸に遺る思い出は様々で。
しかし、一つも無意味なものはなかったのだろうと、思う。



「此処は…変わってないね」

「うん…」

「螢さまが……いないだけ……」



思い出の地に辿り着いた子供達は、少女と出会った時のように泣いていた。
痛い、悲しい、寂しい、苦しい。泣いていては螢が哀しむとわかっているが、今はまだ乗り越えられない。
泣きじゃくるキラとサラを、泣きながらアリスが抱き締める。

愛情を注いでくれた大好きな人。優しさで包んでくれた暖かい人。
笑顔を取り戻し、生き方を教えてくれた人。


もっと一緒にいたかった
もっと色んなことを教えてもらいたかった
もっともっと、ありがとうって、大好きって、言いたかった


守りたいと、思っていた。
けれど現実は残酷で。守られてばかりで、何も返せなかったと子供達は後悔している。

悲鳴を上げる心を慰めるような優しく強い風が吹く。



キラ。サラ。アリス

「「「 !!!? 」」」

「あ……る、じ……さま……?」

「螢さま……ッ 螢さま!! どこにいるの!?」



子供達は辺りを見渡すが、少女の姿は何処にもない。
わかっていたはずなのに、頬を濡らす涙は止まることもなく、大地を濡らしていく。

零れ落ちる涙に陽が反射し、キラキラと輝いている。
その光の一つが弾け、子供達へと語りかけた。



痛みを知っているからこそ、あなた達は優しくなれる。自分勝手な私のことは嫌いになっても構わないから、優しくあってね

「………主様を嫌いになんて、なれません……っ!」

「───螢さま!心配かけてごめんなさい!キラ、頑張るから!螢さまみたいに、優しくなるから!」

「サラも!約束、守る!もっと強くなる!」

「アリス達は負けません!まだ泣いてしまうかもしれないけど、絶対に!」



キラキラと輝く光は空へと消えていく。
聞こえた声は、自身が生み出した夢なのかもしれない。
それでも構わない。痛む心に差した暖かな陽射しは、少女の心だったのだと信じている。



「キラ、サラ。頑張ろう?アリス達もきっとまだ何か出来るわ」

「うん…っ!」

「螢さまに、大好きを返すの。キラ達なら、きっとできるから……ッ」

「主様と約束したこの場所で、誓いましょう。アリス達は負けない、主様のように強く優しい人になろう。いつか必ず、主様を助けてみせるって」

「「 約束!」」



子供達は小さな手を互いに握り、涙を流しながら誓い合う。

1年にも満たない短い時間で多くの心を与えてくれた恩人。
たった数ヶ月。それでも、何年も傷付けられた心を救ってくれた、特別な人。
そんな螢のことが、大好きだから。

憎しみと争いの闇には呑まれない。
心に灯る光は誰にも奪わせないと、誓う。
魂は偽れない。大切なことは、心で決めるのだと。






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