第1廻 その娘、爆弾投下
1984年11月某日
出雲 麻倉家
「おじいちゃん、おばあちゃん」
「ん?どうしたんじゃ、螢」
「おかあさん。おなかにふたりいる」
「は…?」
「おとうと!」
茎子が妊娠しているとは聞いていない。
この幼子はなにを言い出したのかと、祖父・葉明は疑問を持つ。
しかし祖母・木乃は、見えぬその眼で天真爛漫に笑う孫を見据え
「そうかい」
それだけ応えた。
昔から不思議なことを言い出す子どもであった。
祈祷や占いを用いず未来を予知しているかのようなことを言い出す。
生まれながらにして陰陽師のような力を持ち、桁外れの巫力を宿した子。
それが螢であった。
「あのねー!どっちかわかんないけど、おーさまなんだよ!」
「!!」
「…どういうことだい?」
「みらいおー、だって!」
葉明と木乃は顔を見合わせ、席を立った。
不思議そうな顔をする螢に使いを頼み、重々しく息を吐く。
「…彼奴め、よもや我が娘に宿ろうとは…!」
「まずは茎子と幹久を呼ばないとね」
「そうじゃな…」
逃れられぬは麻倉の運命か。
宿命(さだめ)に抗う術はあるのだろうか。
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