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第15廻 その娘、手強い





1998年 冬
元・民宿『炎』



「映画の招待券?」



アンナは葉やまん太と同じクラスに転入し、平和な日々を過ごしていたのだが。



「そうなんよ」

「見せてもらっていい?」

「おー」



突然届いた差し出し人不明の招待券。
3枚入っていたからという理由で、葉は螢に相談がてら誘いにきたのだ。

封筒ごとそれを受け取り、中身を確認する。
ご丁寧に『李白竜リバイバルキャンペーン』と銘打たれているチケットを眺め、考える。



「…んー、遠慮するわ。こういう映画、苦手なんだよね」

「そっか」

「ごめんね?まん太くんでも誘ってみたら?」

「ぉお!そうしてみるよ」

「…葉。一応、気をつけて」

「ん。あんがとな、ねえちゃん」



部屋から出ていったことを確認し、螢は考える。


あやしすぎる
たしか李白竜は中国のカンフーヒーロー
…ものすごく、嫌な予感がする


だからこそ。敢えて、螢はついていくことをやめたのだ。
勝っても、負けても、得るものは必ずあるだろうから。



「お手並み拝見…ってところかな」

「なかなか意地が悪いな、螢よ」

「もっと強くなってほしいだけだよ、狐珀」



アンナがいれば対策の打ちようもあるでしょう
一応近くにはいるけど、ね




















翌日。
午後のH.Rも終わり、葉、アンナ、まん太の三人は帰り仕度をしながら喋っていた。



「李白竜の映画!? 行く!行くよ、葉くん!」

「そりゃよかった。じゃあちっと開演時間遅ェみてェだけど、今日行くか〜 いいよな、アンナ」

「構わないけど。テキトーに時間潰してなさい」

「ん?帰るんか?」

「螢に言っておかないと夕飯作って待ってるわよ、あの子」

「確かに」

「アンナ殿、拙者が行って参ろうか?」

「着替えもしたいから大丈夫よ」



鞄を掴み立ち上がる。


おそらく螢はあやしいことに気付いてる
聞いたところではぐらかされそうだけど…


疑いもせず映画を楽しみにしている葉達を一瞥し、アンナは溜息を一つ。
じゃあね と声をかけて教室を出ていった。




















「ただいまー」

「おかえり。待ってたわ」

「どうしたの?アンナ」



玄関を開いた螢は、アンナの言葉に首を傾げる。
靴は1組。アンナしかいないことだけは、わかったのだが。



「あたし達の夕飯はいらないわ」

「はーい」

「…映画を観に行くの」



螢の反応を見ようと遠回しに言う。
しかし微かな変化も見せぬまま



「ああ、昨日届いた招待券の?」



さらりと言葉を返してきた。


予想はしていたけど、やっぱり手強いわね
単刀直入に聞いたほうが答えてくれるかしら



「あやしいと思わない?」

「物凄くあやしいね」

「誰だと思う?」

「さあ?知り合いじゃないことだけは確かだと思う」

「心当たりは?」

「どうだろう?確信のないことは言っても仕方ないしねー」

「………」

「まっ、大丈夫だよ。アンナが葉の傍にいてくれれば安心だから」



“何か” には気付いているが、けっして核心は明かさない。
こういう時の螢には、なにを聞いてもムダであるとアンナはわかっている。


自分達の目で確かめろってことね…


アンナはそれ以上聞くことはやめ、必要最低限のものだけを持って玄関へ向かった。



「じゃ、いってくるわ」

「いってらっしゃい。 ───アンナ」



呼び止めるようにかけられた声に振り返る。
呼び止めた張本人はにっこりと笑い



「一つだけ。情報は最大の武器だよ」



そう告げた。















これはまだ序章にすぎない
過酷な戦いは、始まってすらいないのだから


大丈夫
あなた達は強く優しい子達だから

乗り越えなさい







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