さよならの準備
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「錫也?」

名前を呼べば困ったような顔が返ってきた。
その先に続く言葉を、私は知っている。

(ごめんな、でしょ?)


「…ごめんな」

それはなんのごめん?
もう考えるのも疲れてしまった。

約束をして、当日になって破られる。
そんな困った顔で謝罪されるくらいなら約束なんてしなければよかったって、そう何度思っただろう。
わかってるのに繰り返してしまうのは私が錫也を好きだから。
まだ錫也の傍にいたいからだって、わかってる?

「今度は、名前との約束絶対守るから」

そう言って、いつもと同じように頭を撫でる錫也の手。
それをうれしいと思う余裕は今の私には無くて、気づかれないようにそっと一歩下がって錫也の手を避ける。

「…うん。楽しみに待ってる」

私はうまく笑えたかな?



(カウントダウンはすぐそこまで。)


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