||壊れた輪廻


何も変わらない日々。
繰り返すだけの日々。
変わる事のない日常。

・・・もう、うんざりだった。


不変であることに疑問を持ったのは、ほんの1ヶ月前の事だった。その日俺は、いつものように朝早く登校路を歩いていた。どうしてなのか、その日はやたらと周りの変化が目立って見えたんだ。
例えば普段は気が付く事もない植物達のしなり具合だったり、例えばそれは鳥達の鳴き声の微々たる変化であったり。
そんな、誰も気にしない、誰も気が付かないような小さな変化が、嫌に気になった。

そして、それと同時に、そんな小さな変化すら見せない自分や世界が嫌になったのだ。

下剋上を強く求め始めたのも、その頃だったと思う。

あれから毎日、世界を傍観してきたが、まるで何も変わらない。同じことを繰り返すだけだった。

「・・・・・・」

俺は思う。ここで誰かが死ねば、世界には何か変化が訪れるんじゃないかって。
そう、例えば今俺の隣にいる、可愛い幼馴染みなんかが死んだりすれば、世界は少しぐらいの変化を見せるんじゃないかって。
馬鹿げた事、っていうのは知ってる。そんなんで世界が変わるならば、俺はこうも悩んだりはしない。

でも、飢えた俺の好奇心は、その感情を、狂気を、我慢する事ができなかった。

「佑美」
「ひよ・・・?」

"ごめん、"

誰かが呟いたと思った瞬間、キャアアアア、とうるさい悲鳴が上がった。教室が騒ぎに陥る。あぁ、うるさい。こんなものでは「変化」の内に入らない。まだ、こんなものではただの日常だ。

真っ赤に染まった手を何の感情もなく見つめ、それから隣で真っ赤になっているモノを見つめた。
可愛らしかった彼女の表情はそこにはない。なんて醜い、と小さく顔を歪めた。

「だ、誰か人を呼べ!!」
「救急車!」

あぁ、もう、うるさいな。
軽く顔をしかめて、辺りを見渡す。やはり、そこに変化はなかった。

「・・・・・・、」

そうだ。変わらないのなら、変われば良い。この俺自身が。世界に変化なんて最初からいらなかったんだ。

「・・・くくっ、」

なんて馬鹿だったんだ。さぁ、今すぐ変わろう。そうすれば、きっと何か見えて・・・・・・

「いやぁぁぁぁぁ!?」

流れていく赤色に、また悲鳴が上がった。だからうるさいんだよ。でもこれで良い。これで、やっと世界は変わって・・・、

「・・・何も、変わらないよ」

薄れゆく意識の中、どこかでそんな小さな声を聞いた気がした。その声は、どうしてか可愛かった幼馴染みのものに酷く似ていた。


れた


世界はけっきょく、変わらなかった。
――――――――――――
いつの間にか狂気沙汰の話になってました。

2012/3/6 repiero (No,32)

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