||残念、好きでした。


「大好き」

唐突に、佑美が言った。
彼女は俺にとって、他より多少仲の良いクラスメイトという程度の認識の女だった。告白というものに慣れてしまっている自分にとっては、彼女の言葉に驚きなど浮かばない。俺はしばし佑美を見つめた後、落ち着いた声音で言った。

「そうか」

あはは、跡部冷たーい。なんて佑美が笑う。でもその目は笑っていない。泣いているわけでも、焦っているわけでも。ただまっすぐに、俺を見つめていた。
今まで会った女にそんな奴はいなかったから、ほんの少しそれを「面白い」と思った。でも別にそれだけで、特に何の情も沸かなかったのだが。

「ねぇ、私の事嫌い?」
「別に」
「じゃあ好き?」
「別に」

心底どうでも良さげな声音に、佑美がまた笑う。酷いなぁ、と少し嬉しそうに笑う。それを無表情に見つめる俺は、心の冷めた人間なのかもしれない。静かな生徒会室では自分達の声がよく響いて、その少し緊迫した空気に思わずそんな事を思った。

「そっかぁ。跡部は私の事嫌いなんだね」
「まぁ、好きではねぇな」
「友達としては?」
「嫌いじゃねぇ」
「・・・ふーん、素直じゃないね」

クスクスクス。佑美の笑顔はやはり嬉しそうだ。好きな人に告白して、振られてしまったようなものなのに。俺はそれに少し違和感を覚え、眉を寄せて彼女を見つめた。彼女は表情を変えない。

「・・・ね、跡部。良い事教えてあげよっか」
「なんだ」
「私、跡部の事好きだよ」
「さっきも聞いた」
「ふふ、そうだね。でも好きだよ。跡部も私の事好きでしょ?」
「・・・アーン?お前、」

何かを言いかけて、口ごもる。なぜか言葉が出てこなかった。何を言おうとしていたのかもわからない。顰め面をした俺に、佑美がまた笑う。やっぱり素直じゃないなぁ、と笑う。

「跡部、良い事教えてあげる」
「・・・だからなんだ」
「あのね、今の跡部ね・・・・・・」

クス、と佑美が笑う。それから一拍置いて、

「顔、真っ赤だよ」

と笑顔で言った。

「・・・は?」
「どう?良い事だったでしょ、素直になれない跡部君?」
「は・・・・・・」

無意識に、片手が自分の頬に触れる。あぁ、なるほど。確かに熱い。

「ねー跡部、私の事嫌い?」

そんな俺を見つめて再び嬉しそうに質問してくる佑美は、意地悪く笑っていた。


念、きでした。


実は鈍感なのか、俺は。そう真剣に呟いたら、佑美がニヤニヤしていた。
――――――――――――
意味のわからない話になってしまいましたが、個人的に気に入ってます。
跡部は書きやすくて楽しいですね。

2012/2/29 repiero (No,25)

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