||お手ができたらご褒美です


「・・・あの、先輩・・・・・・」
「ん?なぁに長太郎」
「その・・・、その手は、一体・・・」
「あぁ、これ?見ての通りだよ」
「すいません、俺何も持ってないんですけど」
「持ってるじゃないか、忠誠心とか」
「はぁ・・・・・・」

困ったように眉を寄せてみるが、差し出された手は微動だにしない。俺の前に立ちはだかって、何かを求めるように右手を差し出し続けている。スルーしようにもできない。っていうか、先輩が何を求めているのかが不明。
最初はお金かと思ったが違うし、お菓子とかかとも思ったが違うらしい。ならなんだ、その手は。忠誠心ってどういう意味だ。
色々考えをめぐらすが、答えは一向にでてこない。先輩の奇行には慣れたつもりだったのに、まだわからない事だらけだ。っていうか早く帰りたい。今日は一緒に帰ろうって約束でしたよね、先輩。

「ほら早くー」
「いやだからなんですかそれ」
「だからアレだよアレ!できたらご褒美あるよ!」

ご褒美って言われても、別に惹かれるわけじゃないしなぁ・・・。っていうか俺は何をすれば良いんだ。たぶんそう聞いたら「彼氏でしょ!?」って言ってくるに違いない。いやだからなんだって話なんだけど。

「あの、先輩・・・。そろそろ答えを教えて欲しいんですが・・・」
「だめ!」
「うーん・・・・・・」

・・・あ、もしかして先輩は手を繋ぎたいとか?そういう話?だったら面倒な事しなきゃ良いのに。

「はい、先輩」
「・・・え?」

す、と先輩に手を差し出す。たぶん掴んでくれるはずだ。・・・と思ったら、なぜかすごくびっくりしてる。俺、変な事したかな?

「そ、そう来たか・・・でも私は従わないぞっ、さぁ長太郎、お手だ!!」
「・・・は?お手?」
「私に逆にお手をさせようったってそうはいかないよ!」

・・・あぁ、そういう事か。先輩は手を繋ぎたいわけじゃなく、俺にお手をして欲しいと。・・・いやなんでだよ。あ、忠誠心ってそういう事?俺って犬っぽいの?

「むー・・・長太郎、早くー・・・」

先輩の方はとうとうむくれ出した。頬がぱんぱんですよ、先輩。でもそんな不満げな顔も可愛い。先輩の意図もわかった事だし、素直にお手をしてやる事にしよう。たぶんそうしないと一生帰れない。

「・・・わん」
「おぉぉっ、えらいよ長太郎ー!さてはご褒美につられたな!?」
「いや、違いますけど・・・それで先輩、そのご褒美ってな・・・」

言いかけた言葉を断ち切るように、先輩が俺の唇をふさぐ。俺はそれに目を見開き、頑張って背伸びをしている先輩の顔をじっと見つめた。微妙に頬が赤い。

「・・・あ、せんぱ・・・・・・」
「よし、ご褒美終わり!帰るよ長太郎っ!」

その照れを隠すかのように、先輩が歩いていく。俺はその姿を見つめ、にっ、と微笑んだ。そうして彼女の体を後ろから抱きすくめるように捕まえて・・・、

「わっ、長太郎!?」
「今日はこのままずっと離しません」
「ええ!?」
「仕返しです」

クス、と微笑めば、俺の腕の中で先輩が頬を膨らませた。それから恥ずかしそうに俺の胸に顔をうずめてくる。俺はそんな先輩を見つめ、またクスクスと笑った。

「むー・・・だからってお姫様抱っこはないよぉー・・・」
「嫌ですか?」
「・・・嫌じゃないけど!!」


来たらご美です


(頬を染めて反論してくる先輩は、何よりも大切な存在)
――――――――――――
甘くしたかったのですが、ただの変な話になってしまいました。
ちょた大好きです。

2012/2/5 repiero (No,7)

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