||不真面目恋心


こちら丸井ブン太、ただいま教室でひとり寂しく反省文なうです。えーぇ誰もいませんとも。さっきまで俺を見張ってた教師すらいねぇってどういう事だよぃ、おい。まぁ反省文書かされてんのは俺が悪ぃにしても、ぼっちはねぇだろぃ?しかもこのまま部活行ったら幸村とか真田に怒られるの確定だよぃ。ジャッカルには確実に呆れられるし、・・・あのジャッカルにだ!!あーなんか考えただけで腹立ってきたよぃ。っつーか腹減った。大体なんで俺反省文書いてんだ?あ、寝坊したからか。・・・やっぱ俺が悪ぃんじゃねぇか!

「・・・あー、だるっ」

でも途中で投げるとまた面倒な事になるしなー・・・。まだ原稿半分も残ってやがるぜぃ、こういう時はうるさい女子でもいた方がまだマシってもんだ。例えば、・・・あいつはうるさくないけど、隣のクラスで俺の苦手な風紀委員の牧野とかでもまだマシ。うん。

「あれ、丸井君?」

・・・前言撤回、やっぱり牧野はいて欲しくねぇ!!なんでお前ここにいんだよ!

「反省文書いてるんだ。こんな時間に教室いるから、また何か問題起こしてるのかと思った」
「んな訳ねぇだろぃ。俺は放課後は部活あるから真面目なんだ」
「へー、それは初耳。"真面目"ね。・・・だったらそのだらけきった服装をなんとかしてもらえるかな?」
「・・・お前すっげー腹立つ」
「私は当たり前の事を言っただけだけど?丸井君が勝手に規律破って勝手に苛立ってるだけじゃん、私全然関係ない」

にこっ、と牧野が笑う。・・・これだからこいつ苦手なんだ。俺はとりあえず牧野は無視する事にして、反省文の方に集中した。ぶっちゃけ書く事ない。国語は得意だし反省文は何回も書かされてる(おい)から書き慣れてるけど、それでも書く事ない。こんなもんスラスラ書ける奴いんのか?あぁ、いたな。目の前に。こいつならすっげー早さで書き上げそうだ。まぁ反省文とか書いた事ねぇんだろうけどな。

「なにか用でも?」
「・・・別に」
「っていうか、いつから書いてるの?その原稿」
「・・・・・・1時間前」
「・・・はぁ?さすがにそれは手こずりすぎじゃない?慣れてるでしょ、反省文なんか」
「おっまえやっぱムカつく。じゃあ俺の代わりにお前書いてみろよ、ぜってー書く事ないっつって手ぇ止まるから」
「本当に反省する気持ちがあればいくらでも書けるよ。それからさり気なく私に押し付けようとするな」

うわっ、ばれてるし。だってお前なら5分で終わらせてくれそうだしよぉ・・・。大体、「反省する気持ちがあればいくらでも」だって?俺に反省する気持ちがねぇとでも思ってんのか!実際ねぇけど。
まぁ、こいつ風紀委員だしなー。俺毎朝こいつに捕まってるもんなー。俺の性格把握してねぇ方が不自然か、くそっ。

「あーもー書く事ねぇー」
「諦め早いね」
「かれこれ1時間悩んでる人間に言うか、それ」
「あらそうだった?興味のない事柄はあまり覚えない性質なの、私」
「お前それ流石に記憶障害疑うぞ」
「きゃー丸井君に暴言はかれたー」
「そういうボケいらねぇから、無駄な体力使わせるなよ」
「良いじゃん、別に」
「俺は良くねぇんだよ。っつーか俺は突っ込み担当じゃねぇ」
「じゃあ、かといってボケでもない丸井君ってなんなの?ブタなの?」
「お前それそっちの方が暴言じゃねぇか!」
「知ーらんぺったんゴーリラ」
「意味わかんねぇ!」

あぁもう、くそ。さっきから全然原稿進んでねぇぞ。いやそれは最初からそうなんだけどさ。いつもの如く牧野のペースに飲まれてるしほんと腹立つ。っていうかこいつは俺に恨みでもあんのか!?俺なんかしたか!?あぁ、この服装がまずいのか!?

「・・・ん、どうしたの丸井君?」
「・・・・・・」
「なっ・・・、丸井君がシャツのボタン全部しめてネクタイも締めて腰パンもしてないなんて嘘だ!!そんな姿始めて見たよ!?」
「うるせー!、お前がゴチャゴチャ言うから服装正してやったんだよ!」
「うっ・・・、私の長年の苦労もついに実っ・・・」
「お前風紀委員入ったの3年になってからだろ"長年"ってなんだよ」
「えー、つまんなーい。丸井君そこはのろうよ」
「お前は俺に何を求めてんだ」
「それにしてもほんとにピシッとしたね・・・。・・・・・・これで、もう・・・」

急に牧野がしおらしくなる。さっきまでの威勢はどこにいったのか、その姿は少し寂しげだった。俺はそれに軽く眉を寄せ、どうしたんだ、と声をかけた。しかし牧野は何も答えない。

「・・・丸井君」
「あ?なんだよ」
「・・・・・・好き」
「・・・は?」
「ごめん」
「あ、ちょっ・・・・・・、」

ぽつ、と言い捨てるように言葉を吐いて、そのまま教室を飛び出していく。俺は慌てて立ち上がり、反省文なんてそっちのけで無意識に牧野を追いかけた。なんで追いかけたのかはわからない。なんで嫌いなはずの牧野なんかを・・・。
途中でさっきまで俺を見張ってた教師にすれ違って、声をかけられたような気もしたが、無視した。今はそんなの気にしてる場合じゃなかったから。牧野は屋上へと逃げていって、それを追いかけて階段を上って行く内、段々冷静になっていった。

(・・・俺、追いかける必要ねぇじゃん)

牧野には悪いようだが、俺に告白してくる奴なんて山ほどいる。今みたいに言い逃げしてく奴だってたくさんだ。そういう奴らは普段だったら相手にしていないのに、なんで俺は今アイツを追いかけてんだ?
なんで、って思う気持ちが一気に膨れ上がって、そうして屋上の扉を開ける頃、まるでたくさんの鍵の中からたった一つの正しい鍵を探り当てたみたいに、直感したんだ。俺の視線の先ではあいつが後ろ向きに息を切らしてて、その姿を俺は呆然と見つめてた。

「・・・牧野」

静かに名前を呼んで歩み寄れば、牧野が悲痛な顔をして振り返った。どうして来たんだ、とでも言いたそうな顔だった。たぶん彼女の気持ちは本心なんだろうけど、言って後悔した、そんな感じだった。
しかし牧野が声を上げるより先に、俺は彼女を抱き寄せてキツく抱きしめた。腕の中で、牧野が驚いているのがわかる。ほとんど無意識に近かったから、俺もちょっと驚いた。なにしてんだ、俺。

「ま、丸井くっ・・・、」
「好きだ」
「!」
「俺、牧野の事が好きだよぃ」
「え・・・・・・、」

抱きしめる力を強めて、自分自身も確かめるようにその言葉を放つ。牧野の言葉を受けて、必死になってこいつを追いかけている内に気付いてしまったこの気持ち。牧野には突っかかってばっかだけど、嘘じゃない、と思った。

「ほ、ほんとに・・・?」
「ほんとだよぃ」
「・・・良かっ・・・・・・、」

かくん、と牧野が膝から崩れ落ちる。俺は慌ててそれを支え、そのままゆっくりとコンクリートにおろした。牧野の顔をのぞいてみたら、真っ赤だった。うわ、タコみてぇ。・・・言ったら殴られそうだけど。

「・・・丸井君」
「なんだよぃ?」
「反省文。良いの?」
「・・・・・・あぁっ!!」


真面


(そういや、俺が服装直した後、なんて言ってたんだ?)
(・・・"これでもう、丸井君と接点無くなっちゃうな"って)
(・・・・・・お前、俺が明日もこの服装キープできると思ってたんだな)
――――――――――――
オチが上手く書けません。
どうやったら感動的に書けるんでしょう。

2012/2/12 repiero (No,10)

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