||偶然は疑惑を生む





「もぉー・・・ブン太どこ行ったのかな・・・・・・」

今日は一緒に帰る約束だったのに。
困ったように溜息をついて、私はまた誰もいない教室の扉を開いた。

「ブン太ー、いるー?」

返事は無い。ここも違うか。
すぐに見つかると思っていたものの、案外そう簡単にはいかないもので。私はもうかれこれ10分以上は彼の事を探し回っている。


部活終わりの事、私はブン太を部室に迎えに行った。するとなぜかブン太の姿が見当たらず、帰って来た答えは「今日は部活に出ていない」という言葉。特にブン太から何か聞いているわけでもなかったから、私は首を傾げた。
もう帰ってしまったのかと思ったが、靴や鞄はまだ残っていた。一応勝手に帰るわけにもいかないので、こうしてブン太の姿を校内中探し回っているわけだ。

「すれ違いになったとか」

うん、ありえるかも。それなら仕方ないけど、なんで部活でなかったのかな・・・。たぶん明日辺り真田さんとかに大目玉くらうんだろうな。あぁ、せめて言い訳しといてあげればよかったかも。
そんな事を考えながら、私はまた教室の扉を開いた。やはりそこに人の姿はなく、ただ不気味な人体標本だけがあった。放課後に理科室とか行くものじゃないよね。ってか、なんで鍵開いてるんだろ?
さて、それはともかく後調べていないのは音楽室だけになってしまった。わりとすぐ近くにある教室だが、私は既に半ば諦めかけていた。

(音楽室なんているのかな)

ブン太があそこに用事があるとは思えないし。やっぱりすれ違いになったのかな・・・。
とぼとぼと歩みを進め、音楽室の扉の前で歩みを止める。そうしてその取っ手に掛かった手が、ふとぴたりと止まった。

(・・・ブン太?)

中から誰かの泣き声と、それを慰める声が聞こえたのだ。それはどちらも知っている声だった。泣いているのは私の姉である愛華、慰めているのは・・・・・・。

「嘘・・・・・・」

自然と、後ずさった。どちらも間違えようが無い、紛れもなく愛華と彼の声で。頭の中を様々な疑問や怒り、困惑が飛び交い、私はしばらくその場を動けなかった。
どうして、彼がこんなところにいて、愛華と一緒なのか。
嫌に心臓がうるさい、そんなに騒いではブン太たちに聞こえてしまうかもしれないというのに。あぁ、なんで私はブン太を探しに来てしまったんだろう。

「・・・っ、」

ブン太の心配するような声が、酷く辛くて。

私はその場所を逃げるように走り去った。

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