||例え愚かでも





【舞華side】
1コール、2コール、と携帯を鳴らす内、どんどんと自分が馬鹿らしくなっていった。なぜ自分はこんなことをしているんだろう。いや、それよりも、なぜ自分はあんなことをしてしまったのか。

「ブン太・・・」

ただいま、留守にしております。そんな機械じみた声が聞こえ、私は乱雑に電話を切った。それからもう一度、かけ直す。彼は電話の向こうで呆れていることだろう。どうして今、こんな風に自分に電話をかけることができるのかと。怒っているかもしれない。もしかしたら途方にくれているかもしれない。でも、やらなければいけない。これが最後、これが最後で良いから、彼に、伝えなければ。

3コール、4コール。もう連続して3回も電話をかけているが、彼が出てくれる気配はない。そりゃあそうだ。さっき盛大にお姉ちゃんに振られちゃったようなわけだし、それにそんな後で大嫌いな私なんかと話したい筈がない。
また切られてしまったらどうしよう。もう二度と、彼と会話をする機会も設けられなかったら。
自分が今からやろうとしていることの覚悟だけでも、せめて伝わって欲しいのに。でももし、この電話でダメだったら・・・、そんなことを考えている内、ふと、コールの音が途切れた。

『・・・もしもし』
「! もしもし、ブン太?」
『何の用だよい。あんまり話したくねぇんだけど』
「あのね、お願いだから、聞いて欲しいことがあるの」
『・・・・・・なんだよ』

良かった、とりあえずブン太も私の話を聞いてくれるようだ。あぁ、これでやっと言える。やっと伝えられる。私は静かに口を開いた。

「・・・まずは、夏祭りの時、騙すような真似してごめん。別れなくちゃいけないって思ったら、もうそうするしかなかった」
『・・・それは、俺も悪かった。お前と、ちゃんと話し合う前に愛華に・・・』
「もう、それは良いよ」

私は微笑む。でも同時に、泣きたくなって顔がくしゃりと歪んだ。声が震える。でも精一杯、明るい声で言った。
言わなくちゃいけない。いつまでもすがりついてちゃいけない。もう、これで、終わりにしなくちゃいけないんだ。

「だから、・・・別れよう」
『え・・・?』

しばしの沈黙。答えは聞きたくなかった。認めなきゃいけないって、もうとっくにわかっていたけど。でも、彼の口から直接それを聞くのは嫌だった。

『お前は、それで良いのか?』
「・・・ごめん、ありがとう。もう、私たち、終わりにしようね」
『・・・・・・悪い』

最後に、そんな風にブン太は謝った。切るぜ、という声があって、それから電話が切れる音がした。私はほっと息をついて、それから抱き締めていたクッションをベッドにおいた。目じりに走った涙をぬぐって、重い腰を上げる。あぁもう、私、ほんと馬鹿みたいだ。

(・・・ごめんね、お姉ちゃん)

許してくれるとは思わないし、無理に許してもらおうとも願わない。だからこそ、今から、お姉ちゃんに「本当のこと」を言いに行かなくちゃならない。

(せめて、ブン太を嫌いにならないでね)

意を決して、コンコン、と扉にノックをした。

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