||姉
◇
【愛華side】
「たっだいまー!」
「・・・おかえり、舞華。遅かったね」
「今日はね、ブン太と花屋によってきたんだ!はい、これお姉ちゃんにあげるね!」
「・・・・・・そっ、か。ありがとう」
「どういたしまして!」
夏休みが明けてからと言うもの、舞華のノロケは日に日にエスカレートしていった。夏休み中も、早く会いたいだの電話でなにを話しただのと言っていたが、今はそれ以上だ。
ブン太とは夏祭り以降、"毎日連絡をとっていた"という話だから、きっと久々に会えて嬉しいのだろう。
(やっぱり嘘だったんだ。ブン太さんの言葉は、なにもかも)
けれどあの時、何故わざわざリスクを負うような真似までして、私を騙そうとしたのか。それだけは、ずっとわからずにいた。彼にそのことで利益があるとも思えないし、じゃあ何故彼はあんなことをしたのか。
(・・・もういいや。忘れよう。早く忘れて、それから・・・・・・)
「それでね、ブン太が・・・で、」
(舞華の幸せを、祝ってあげられるようにならなくちゃ)
そうすればきっと、この精神的な苦悩からも逃れられる。彼のことを、嫌いになれさえすれば。そう、それだけのことだ。それは今までだってやってきたことに変わりない。舞華のため、舞華の幸せのために。
私は、お姉ちゃんなんだから。
「・・・・・・」
「どうしたの?舞華」
「あ、ううん。なんでもない」
微笑んだ私を、一瞬、舞華が鋭く睨み付けたような気がした。
「あ、ブン太から電話だ。ちょっとごめんね」
「え?う、うん・・・・・・」
今のは、気のせい?
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