||邪魔者





【舞華side】
夏休みが明けた。テニス部の大会のせいもあったが、ブン太とはメールも電話もないままに長期休暇を終えてしまった。しかし今日こそはと、開校の初日、彼にメールを送った。朝、一緒に登校しよう。そういう内容だった。当然かもしれないが、返信はなかった。いや、返信の必要などない。

「・・・なんでお前がいんだよぃ」
「一緒に行くって、言ったでしょ」
「約束した覚えはねぇ」

どうせ彼が一人でさっさと行ってしまうつもりなのを見越し、私は朝早くにブン太の家にむかった。家の外で待ち伏せていれば、嫌がおうでも一緒に行くことになる。断られても無理矢理ついて行けば良い。そう思ったのだ。

「・・・ねぇ、ちょっとは喋ってよ」
「・・・・・・」

ブン太はイラついたような顰め面で、黙って前だけを見ていた。私の方など見ない。私が隣に立っていることを意識するのすら拒まれているような気がした。
・・・わかってはいた、覚悟もしていた。夏祭りの一件以来、私が彼に嫌われてしまったことを。その前まではせめて嫌われてはいなかっただろうが、あんなことがあっては、もう限界だ。余程のことがない限り、私たちが元の関係に戻ることはきっと難しい。

「・・・あ、」

ブン太が顔を上げた。彼の視線を追うと、そこには姉の愛華が歩いていた。と、彼女がこちらに気が付く。私はここぞとばかりに姉に手を振った。それも満面の笑みで。途端に泣きそうに顔を歪める姉を、してやったりとでも言うように見つめた。

「愛華・・・」

ブン太の小さな声。そちらを見ると、彼もまた、寂しそうな、悔しそうな顔で彼女を見つめていた。

「・・・・・・じゃまものはわたし」

そんなことはもう悲しいくらいに理解している。だが、そこで姉のように身を引いてしまえば、本当にそこで終わってしまう。醜くても良い。邪魔者でも良い。ただ、ブン太の隣にさえいることができれば。

(邪魔者は、邪魔者らしく)

せいぜい、足掻いてやろうじゃないか。

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