||ばらばら
◇
[愛華side]
何度も携帯が鳴った。届いたメールや電話は、全て彼からのものだ。しかし私はそれには出ずに、ずっと耳をふさいで布団にくるまっていた。
私が泣きかえった数時間後、舞華が笑顔で帰宅した。楽しかったー!、ブン太とこんなとこ回ってきたんだ、とまるでいらない情報を並べながら。無意識の内に泣きそうな顔になる私を、舞華が心配する。けれどその瞳は、どこか冷めているような、そんな気がした。それは単なる私の勘違いなのかもしれないが。
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To:愛華
From:丸井ブン太
愛華、今どこだ?
もう帰っちまったのか?
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To:愛華
From:丸井ブン太
ごめん
あいつと別れきれなかった
怒ってるよな?
約束を破ったわけじゃねぇ
それだけは信じてくれ
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To:愛華
From:丸井ブン太
愛華、もう寝てるのか?
起きてたら、いつでも良い
から返信くれ
許してくれなくて良いから
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文面からは、彼の必死さが伝わってくる。噴水公園での一場面を見ていなければ、私はまた信じていただろう、嘘吐きな彼のことを。けれどあれを見てしまったからには、もう、無理だ。私は彼に騙されたのだ。
(うそつき)
またこぼれそうになる涙をぬぐって、布団をきつく握り締めた。下の階で、ぺらぺらと楽しそうにお喋りをする舞華の声が聞こえる。彼女は少しも悪くないというのに、その幸福が、妬ましく思えて仕方が無かった。
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