||光と影


私達は双子。
声も顔も、姿も、力も、全てが似ている。
私とあなたは、同じ存在。

それなのに私達は・・・

常に「光」と「影」で、わかれていたんだ。





「愛華、じゃあまた帰りに」
「うん。また」

手を振って別れる。朝、教室に入る時の習慣だ。私は3年C組、双子の妹である舞華は3年B組。10人中10人に「似ている」と称されるほどのよく似た双子で、お互いに間違えられることは稀ではなかった。友人たち曰く、とても「よく似た」姉妹なんだそうだ。

「おはよー」

先に来ていた友達に挨拶を交わして、席に鞄を下ろした。
親友の香奈は、いつ見ても元気いっぱいなのだから羨ましい。大きなくりくりの茶色っぽい瞳は彼女の白い肌によく目立ち、桃色の唇がその印象を更に柔らかいものに変えている。ふわりと内側に軽くカールした茶髪は、彼女によく似合っている。うちのクラスは勿論、他のクラスからも可愛いと評判の子だった。

「おはよ、今日も眠そうだねー」

クスクス、と少し高めの声で香奈が笑った。確かに眠いが、今日「も」というのは心外だった。別に眠くない日だって一応ある。・・・眠い日の方が確実に多いわけだけど。

「あ、舞華ちゃんだー」
「え?」

言われて振り返ってみれば、廊下を舞華が友達と笑顔で歩いていった。その笑顔は、姉である自分が見ても可愛い。
たしかに「似ている」とは言われるものの、自分の顔だ。彼女のつくりだす表情との違いぐらい、わかっているるもりだった。
大きな黒い瞳とカールした睫毛、透き通るような白い肌。形の良いピンク色の唇と高い鼻がバランス良く整えらた舞華の表情。私もそれと似たような顔立ちはしているが、彼女の可愛らしさにはとてもではないが劣る。
それに私は長い黒髪をサイドで低い位置にしばっているが、彼女は私とは違ってポニーテールがよく似合うのだ。それも彼女の活発な性格から来ているのだろう。
運動が大好きな彼女に対し、私は読書や料理が好きで、そのせいか私達はまるで正反対な性格をしている。他の部分はそっくりなのに、そこだけが違うのだから可笑しい。
自信たっぷりな彼女と、自信のない私。その姿はまるで光と影のようだと、自嘲気味に笑った。

「そういえばさ、聞いた?舞華ちゃんと丸井君の噂!」
「あぁ、聞いてるよ。本人の惚気話も毎日聞かされてるし」
「わ、まじで?やっぱ付き合ってるの?」
「まだそういう段階ではないみたいだけど・・・今度告白するんだって」
「うっそー!たぶんOKなんだろうなぁ・・・羨ましー!」

そう言って笑う香奈を見て、自分も少し苦笑する。
丸井君と舞華は最近急に仲良くなりだしたようだが、その仲は私の見る限りでもずいぶんと円満なようだった。それこそ、告白なんてものが必要ないんじゃないかと思うくらいに。

「・・・丸井君、か」

前に見掛けた丸井君の笑顔を思い出し、無意識に小さく微笑む。
舞華の事、応援してあげなくちゃ。

そう言って微笑む自分の思いは、どこか違う方を向いているような気がした。

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