||決定打
◇
[舞華side]
その電話がかかってきたのは、私が家に帰宅した後のことだった。
リビングで軽やかなメロディーが流れ、反射的に自分のポケットを探る。しかし携帯は震えておらず、私は首を傾げた。
(もしかして、お姉ちゃんの?)
今は姉妹2人でお気に入りのドラマを見ていたのだが、姉はトイレで席を外していた。ソファの上で震える黒い携帯が、虚しくも着メロを流し続けている。
(誰からかな)
なんとなく気になって携帯を開いて、・・・そして私は後悔した。
「え・・・、ブン、太・・・?」
扉の方を見る。姉の帰ってくる気配はない。出てはいけないとはわかっていても、ブン太が姉に何の用で電話をかけているのかがどうしても気になった。・・・もしブン太が、お姉ちゃんではなく妹の舞華であると気がついてしまったらどうしよう。いや、彼はきっと気がつかない。ただでさえ、彼は私の事を見なくなってしまったのだから。
(出てみよう)
なんでもない用事だったのなら、正直に姉にこのことを言って、謝れば良い。私は無言で通話ボタンを押した。
「もしもし・・・」
『あ、愛華かよぃ?出ないかと思ったぜ・・・』
「どうしたの?・・・ブン太さん」
『あぁ、ほら、今日夏祭り誘っただろぃ?』
「・・・え?」
『? どうした?』
「あ、ううん・・・。なんでもない」
『まぁ、それでよぃ。ほんとは舞華とは行く気なかったんだけど、約束させられちまってさ・・・』
「・・・!そ、そうなの?」
『あぁ。でも・・・』
『その時に、あいつとはちゃんと別れるから』
「っ!!」
『・・・ん?どうした?愛華』
「あ、ううん・・・なんでも、ないよ」
『そっか。じゃあ確認するけど、最終日の夜8時に、駅前集合だからな。何かあったらまた連絡する。じゃあな』
電話が切れた瞬間、私はゴトリと携帯を落とした。
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