||壊れかけの信頼





[舞華side]
「あ、ブン太。どこ行ってたの?」
「・・・舞華か。わり、ちょっとトイレ行ってた」
「ふぅん・・・。じゃあ、帰ろっか」

私は彼を促して、帰路についた。途中、何度もブン太に話しかけたが、彼は私の言葉など聞こえていないのか、返ってくるのは生返事ばかり。まるで心ここにあらずといったようすに、悲しげに眉が動いた。当然のことながら、彼は私のそんな表情になど気付くこともないのだが。

「ねぇ、ブン太。聞いてる?」
「・・・あぁ。なんだよぃ」
「あのさ。明日から、夏休みじゃん?」
「そうだな」
「それで、1週間後に夏祭りあるでしょ」
「おう」
「だから・・・一緒に、行かない?」
「・・・は?」

そこまで来て、彼は初めてこちらを向いた。驚いたように目を開いて、こちらを凝視して。どこかその表情の中には、「ふざけるな」とでも言いたげな、そんな意思が混じっているような気がした。でも私は負けじとそれを見返す。たしかにブン太にはテニスがあるけど、夏祭りくらいは行くことだってできるはず。それに、私だって彼女なんだから、それぐらいのわがままは聞いてくれたって良いじゃないか。

「あー・・・、何日だよぃ。3日間あるだろ」
「えっと・・・初日と、最終日がいい」
「・・・最終日は無理だ」
「なんで?」
「それは・・・・・・」

ブン太は言葉を濁し、私から視線を逸らして彷徨わせた。私はそれに唇を噛む。彼が言葉を濁した理由に、良い予感などとてもしなかった。

「・・・まぁ良いや。日にちはまた後で決めよ」
「・・・・・・おう」
「・・・・・・約束だからね」

期待をかけて、縋るように述べた言葉には、ブン太は何も返してくれなかった。こんなに近くにいるのに、彼の心は側にはいない。いつのまにか遠く離れてしまったブン太の存在を、私はそれでも確かに感じていた。

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