||必要性


「蓮二先輩、おはよーございます」
「あぁ、おはよう」
「先輩、「『今日も早いですね』、・・・とお前は言う」・・・ビンゴです先輩。今日も「『冴えてますね』、と言うのだろう?」・・・・・・そこまで予測されちゃうと会話の意味がなくなりかねないです、先輩」

そうか、といって俺が笑うと、綾乃も笑った。どうせ(それはそれで意思疎通が楽で良いな)とか考えているのだろう、彼女は。言ってみたら案の定それだったようだ。相変わらずわかりやすいのだから。いや、俺が彼女のことをわかりすぎているのかもしれないが。

「・・・そうだ、先輩きょう何の日か知ってます?」
「付き合って1ヶ月の日、か?」
「さすが先輩」

ザッツライトです、という綾乃の声はなんとなく嬉しそうだ。俺がそんな大切なことを忘れるわけがないだろうに。

「じゃ、せんぱい「『今日どっか行きましょうね』とお前は言う」・・・もうそこまでくるとほんとに会話いらない気がしてくるんですけど」
「会話がなければお前の声を聞けないだろう」
「いやどういうノロケですかそれ」
「ふっ、説明してほしいのか?」
「い、いいですって!もう・・・」

綾乃は一度ため息をこぼし、それからふと顔をあげて、

「そうだ、で、どこ行きます?」

と思い出したように切り出した。どこ、と言われてもなかなか難しいもので、とりあえず彼女の行きたそうなところを3つほどあげてみたが、返ってきたのは「うーん」というあまり好意的ではない返事だった。

「ふむ・・・、となると、候補はあとひとつしかない、が・・・・・・」
「が?」
「ここに行きたいのなら、お前の口から言ってもらわないとな」
「・・・・・・えぇー、「『今まで散々人の言葉を勝手に代弁してたのに、ですか?』と言うのだろう」そこまでわかってるなら先輩が言ってくださいよ!」

そうは言われても、こればかりは譲れない。困ったようにため息をつく彼女の頭を撫でて微笑んで、赤くなった頬にやんわりとキスを落とす。本人にしてみれば、たぶん尚更言いにくくなったことだろう。

「・・・・・・どうしても私が言わないとだめですか?」
「たまにはお前の口から言ってもらわないと、本当に会話の意味がなくなりかねないからな」
「ぜったいそれが理由じゃないくせに!」

ふむ、ばれてしまったようだ。

「・・・じゃあ、言いますよ。言いますけど、ここまで来たら絶対行かせてくれるんですよね?」
「まぁ、お前が言えば連れていこう」
「・・・じゃあ言います。今日、先輩の家いきたいです・・・うわなんだこれ無駄に恥ずかしい!」

先輩が余計な前振りいれるからですよ!という突っ込みはもれなく正しいが、言うとまた面倒なので何も言わないでおく。

「うぅ・・・言ってしまった・・・・・・」
「ふっ・・・可愛いな、お前は」
「な、なんですか突然」

誉めてもなにもでませんよ、と綾乃は呟くように言い、うつむいて照れたように顔を覆った。


要性


こういう彼女の一面を見る為にも、やはり会話な必要なのだ。
――――――――――――
ほのぼのと言い張ります。
リクエストありがとうございました!

2013/3/5 repiero (No,116)


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