||君の笑顔の為に俺ができる事


君の笑顔の為に僕がした事の続きです。


大好きな彼女がいる。優しくて可愛くて、でも時々甘えたで。いつも俺はドキドキさせられっぱなしで、もう、可愛くて可愛くて仕方がない、っていう感じだった。
3年の秋になるともう部活はないから、俺は放課後になると教室まで彼女を迎えに行くようにしていた。でも今日はうちのクラスは先生の長話のせいで終わるのが遅く、あー早く終わんねぇかな、と苛々と終わりを待つほかなかった。

「綾乃、待ってるよな」

もしかしたら、また幸村くんと一緒にいるのだろうか?幸村くんと綾乃は別のクラスだが、最近迎えに行ってみると、時々綾乃と一緒にいる。綾乃曰く何もないということだから、何もないのだろうけれど。
教室をのぞいてみると、そこには誰もいなかった。代わりに書きおきがあって、"先生に用があるから教務室の近くで待ってる"だそうだ。それなら、そこまで行くか。
教務室まで向かう途中、聞き覚えのある声が聞こえた。たぶん、綾乃かな?なんだ、まだこの辺りにいたのか。角からひょいとそちらに顔をのぞかせると、綾乃は椅子に座り、怯えるような表情で、誰か・・・、そう、幸村くんと喋っていた。なにやってんだ、あいつら。

「綾乃・・・?」
「・・・・・・、ねぇ、俺の事、好き?」
「!?」

なんの、話だ?
気になって、もっと近付こうとそっと近寄る。でもすぐに、足が止まった。

ふたりが、キスを、していたから。

「・・・綾乃・・・・・・、」

呆然と、名前を呼んだ。はっ、と彼女がこちらを見る。幸村くんもこちらを見た。なんで、なんでだよ。なんで幸村くんなんかと、キスして、

「ブンちゃ・・・、」

我に返り、彼らをキツく睨みつけ、逃げるように走り去った。後ろから名前を呼ばれたけれど、返す余裕なんてない。走っている途中、綾乃が何か叫んでいるような声も聞こえた。なんて言っていたのかはわからない。

「・・・はぁっ、はぁ、ブンちゃん!」
「追いかけてくんな!!」

俺が叫ぶと、綾乃はショックを受けたような顔をして立ち止まった。それにずきりと胸が痛んだけれど、それよりもさっきの光景の方がずっとキツくて。俺だって、ショック受けてんだよ。大好きなのに、大好きなのに。俺だけだったのかよ。

「違うっ・・・、違うの、あれは、あっちが無理矢理・・・!」
「言い訳すんのかよ・・・」
「言い訳じゃない!!私、ブンちゃんが好きだもん、したくて他の人とキスなんてするわけないじゃん!」

ぼろ、と彼女の瞳から涙がこぼれた。それから堰を切ったように泣き出す。そこまでくるともう見てはいられなくて、彼女を無言で抱きしめた。正直、まだ信じられてない。だってキスだぜ?俺たちだって、数えるくらいしかしたことねーのに。でも、許す許さないの前に、好きな奴が目の前で泣いてたら、もう抱きしめるしかないと思った。

「好きだよぃ、綾乃」
「う、ん・・・、私もっ、」
「信じていいのかよぃ?」
「当たり前だよ・・・!」
「・・・なぁ、後で幸村くん殴って良いよな?」
「・・・かわいそうだけど、お願い」
「殴れるかわかんねぇけどな」

はは、と笑ってやった。綾乃も、少しだけ笑った。信じても良いのだろうか?、彼女の言葉を。疑いたくはないのだけれど、でも、不安がないわけではない。けど、綾乃を泣かせるくらいなら信じてやりたいと思った。そっと頭を撫でて、柔い唇にそっとキスを落とす。綾乃が目を見開いた。


顔の為にがでる事


それは、精一杯大切にして、精一杯愛して、精一杯、信じてやること。だからもう、二度とキスなんかされんなよい!
――――――――――――
幸村短編、「君の笑顔の為に僕がした事」の続編ということで。
サイトに投稿した二つ目の短編だったのですが、まさかそんな古いものを拾ってくださるとは思いませんで、驚いてしまいました。

リクエストありがとうございました!

2013/2/19 repiero (No,109)


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