||生意気


「リョーマってさぁ」

と、何の脈絡もなく、唐突に私は切り出した。屋上には生暖かな春風が吹き、少し下を見るとひらひらと桜の花びらが散っている。それを尻目に、隣で横になっている彼に話しかけると、彼はぴく、と反応を示した後、面倒くさそうに起き上がった。私はそれに形ばかりの笑みを送り、話の続きをはじめた。

「ナマイキだよね」
「先輩ほどじゃないですけど」
「あ、ほら、そういうところが生意気」

ひとつ年下のリョーマはその言葉に鼻で笑い、「峰里先輩が相手じゃ仕方ないよね」と小ばかにするように言った。あはは、そうかもねぇと頷き、カラカラと笑った。リョーマが顔を顰める。私の返答が気に食わなかったらしい。彼はつまらなそうに唇をへの字に曲げ、再び身体を横にした。

「リョーマってさぁ」
「・・・なに?今度は」
「ちょっと、敬語はどこいったの」
「峰里相手になんで敬語なんて使わなくちゃいけないわけ?」
「ついに敬称まで略したなコノヤロ。ま、別に良いけど」
「なら良いじゃん」

くぁ、とリョーマが大きく欠伸をする。仮にも会話中に欠伸とは、失礼なやつ。良いけどね、私ってば寛大だから。けれど彼への文句は忘れずにぶつぶつと呟いて、それから話を再開させる。

「リョーマってモテるよね」
「先輩よりはそうなんじゃない?」
「私と比べる?自分はファンクラブまであるくせして」
「・・・なにが言いたいの?」

リョーマが身体を起こし、顔を顰めた。怪訝そうな顔で私を見る。私はそれにへらりと笑みを返して、さりげなく視線を逸らした。リョーマの視線は、苦手だ。ずっと見ていると、なんだか胸の奥がむずむずとするのだ。

「いや、それがさ。この前、告白されたのよね」
「・・・先輩が?よほどの物好きだね」
「うるさいな。で、それでね。なんて返せば良いと思う?」
「・・・それ、本気で言ってる?」

しん、と辺りが静まり返る。さわさわという風の音だけは変わらずに聞こえる。リョーマはわけがわからない、と言った風に不機嫌そうな顔をして、私の頬を思い切り掴んだ。痛い、痛いって。

「・・・あのさぁ。先輩って、ほんと鈍感だよね」
「・・・馬鹿にしてる?」
「勿論」

リョーマはに、と口端を持ち上げて笑った。何が言いたいのかわからない私は、ただ目を白黒とさせることしかできない。

「まだわからないの?」
「うん・・・、いやあの、睨まないで教えて?」
「『教えて』・・・?」
「教えてくださいませリョーマ様」
「仕方ないな、いいよ」

なにこの上下関係。逆だよ普通。・・・いや逆でも困るけど。

「よーするに」
「うん・・・、っ!?」

突然引き寄せられ、リョーマの顔が近付いた。ちゅ、と小さなリップ音がして、唇になにか柔らかいものが触れる。キスをされている、ということに気がつくのに、そう時間はかからなかった。

「俺が、先輩を好きってこと。わかる?」
「・・・ぁ、えぇ・・・!?」


意気


今のは反則、という私の弱弱しい呟きに、リョーマはニヤリと口元を持ち上げた。恋愛に反則も何もない、と生意気に言いながら。
――――――――――――
リクの順番が入れ替わってしまったようで、申し訳ございません・・・!
リョーマってどんなだったっけ、と思い出しながらの執筆。

リクエストありがとうございました!

2013/02/14 repiero (No,105)


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