||Sugared word


『好き』

そんな甘ったるい台詞を、真顔でやる気の欠片もなく告げてきたのは・・・たしか、3ヶ月くらい前のことだったか。目を見開いた俺に彼女は口元だけで笑い、お返事どーぞ、と子供を相手にでもするかのようにそう言った。まさか3年間片思いし続けてきた相手に突然告白なんてものをされるとは思わず、しかし相手は「そういう」奴だったから、ひとまず「本気か?」と聞き返した。すると彼女はうなずく。当り前でしょう、とさも気分を害されたかのような顔で。けれどそれでも信じられずに、まず自分の頬をつねった。痛かった。次に相手の頬もつねった。痛い、といって彼女が顰め面をする。夢ではないらしい。

『俺も、好き』

そこまで来てようやく俺は答えを口にした。彼女がよかった、と言って笑う。大人びた彼女の表情が、仕草が、声が、俺の身体をびくりと硬直させる。妙に緊張していた。3年間の片思いは伊達じゃない。俺がずっと彼女に告白できずにいたのは、手が出せなかったとかそんな格好付けた理由ではなく、単純にフラれるのが怖かったからだ。そのくらい俺は彼女のことが好きで、大切で、かけがえなく思っていたのだ。

「どーしたよ、雅治」

あれから3ヶ月、今に至り、ずいぶんと彼女と一緒にいることには慣れてきた。そこまで緊張しなくなったし、素を見せられるようにもなった。彼女は「雅治って以外と甘えただね」と俺のことをそんな風に言うけれど。そりゃあ、大人びた彼女にとってみれば、自分なんてまだまだガキだろう。でも、いつまでも「ガキ」のままかといわれればそうではない。

「のぉ、綾乃」
「ん?」
「・・・好き」
「は、」

何を今更?と彼女の唇が言葉を続けるより先に、それを素早く自分の唇で塞ぐ。驚いたように、綾乃の眼が丸くなった。そりゃあそうだ。ここ3ヶ月間、手を繋ぐ以外に何の進展の様子も見せなかったから。ちゅ、とわざとリップ音をたて、何度も角度を変えて触れるだけのキスを繰り返せば、少し息苦しくなったのか彼女が眉を寄せた。

「ん・・・、ぅ」
「綾乃・・・」

名前を呼べば、彼女が惚としたようにこちらを見上げた。若干赤く染まった頬が可愛らしく、俺の情を煽る。我慢できなくなってもう一度口付ければ、彼女の舌が伸びてきて、俺の舌を自ら絡めとった。

「ぅ・・・ふっ、んぅ」

誘われてる気がする。そう思って彼女の方をじぃっと見ていると、目が合った。にや、と彼女が笑ったのを見て、あぁ確信犯なんだな、と少し呆れてしまった。まぁ、可愛いから良いんだけれど。
互いに刺激し合い、遊ぶように絡めていた舌を少し離し、彼女の歯の裏側へとのばす。ギリギリ届くか届かないかくらいの距離だ。はぐきをゆっくりと撫ぜ、歯列を割るように舌を動かすと、彼女が苦しそうに顔を歪めた。でも隙間から漏れ出る熱い吐息は、彼女がしっかりと感じていることを示していた。

「・・・んぅ」
「綾乃?」

堪能し終えたところで、やっと彼女を解放してやると、苦しげに短く呻いて俯いてしまった。しまった、やりすぎたか。だんだん申し訳なくなってきて彼女の顔をのぞきこむと、ふと服の裾を掴まれた。

「ね、雅治」
「・・・なんじゃ?」
「まさかこれで終わり・・・なわけないでしょうね?」

にやり、彼女が笑んだ。


Sugared word


それにすっかり絆されてすぐさま彼女を押し倒してしまった俺は、やはりいつまでたっても大人びた彼女には敵わないのだろう。
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リクエストありがとうございました!

お題提供:-B L U E-様

2013/2/12 repiero (No,103)


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