||エンディングは


いちおーさ。

言っておくけど、俺は童貞なわけよ。キスとかハグとか頭を撫でるとか、そういうのしてたのって全部綾乃だけなわけ。それ以外の相手になんかぜってーやんねぇし、やったとしても自分の意思じゃない。だからさ、綾乃でもまだなのに他の女とセックスなんてするわけねぇだろ?そりゃ、やってみたいっていうのは好奇心として当然ある。男だし。だけどそれが綾乃に対しての裏切りになることは明白で、だいいち綾乃以外の相手とセックスなんてしたくもないから、そういうことはやらなかった。つまり、今回のことは完全な綾乃の誤解で、俺は別に何もしてないわけ。

「わかる?」
「わかんないよ」

ぐす、と鼻水をすすって、半泣きになりながら綾乃が呟く。そのかすれ声を聞きながらひとつため息、彼女のひたいにキスを落とす。彼女は一瞬ぴくりと反応を示したが、すぐにふいとそっぽを向いてしまった。あーもう、こりゃ相当だわ。

「っていうか、なんで綾乃は俺があいつとヤったって思ってんの?」
「・・・みんなそう言うから」
「それだけ?俺のことは信じてくんねーの?」
「親友のみっちゃんも信頼出来るクラスメイトたちも張本人の要さんもそう言ってる」
「・・・なんだよ、それ。みんなも俺のことは信じてくんねーのか。大体、要の名前なんて俺、今日知ったばっかだぞ」
「名前知らなくたって、・・・できるじゃん」
「名前も知らねぇ相手となんてヤりたくねぇよ」

頑なに信じない綾乃の様子に、はぁ、と俺はため息を漏らした。
今日の朝、クラスメイトたちに聞かされた俺に関する噂は、綾乃と俺の関係を引き離し、そしてお互いを苦しめるには十分な意味をもった内容だった。

『綾乃という彼女がありながら、赤也が別の女とセックスした』

あーくそ、誰だよ噂流したやつ。メリットなんかねぇくせにさ。いや、あるのかな、わざわざそんなことするってことは。馬鹿だから俺にはわかんねぇけど。

「綾乃、せめて泣き止んでくれよ・・・」
「・・・・・・」

綾乃は一瞬、こちらを見て何かを言おうとしたが、すぐに口をきゅっと結んでしまった。それからがたりと音を立てて立ち上がり、俺の方をキッ、と睨む。信用されてねぇんだな、俺。そう思ったら悲しくなって、眉尻を下げたら綾乃が背を向けて教室を出て行ってしまった。逃げた、って言ったほうが正しいかも。走ってったし。
追いかける気力もなくて、はぁ、とため息をついてぼんやりと教室の外を見た。雪はないが、すっかり冬の景色である。身を寄せ合いながら歩いて行くカップルが見えて、今日もああやって帰るつもりだったのに、とそんなことをぼやいた。俺たちの関係は戻らないんだろうか。ストーブはついているのになんだか急に身体が震えて、寒ぃな、と呟いたら教室の扉が開いた。綾乃が帰ってきたのかと自然に期待したが、入ってきたのは全然知らない女だった。

「はじめまして、赤也くん」
「・・・はじめまして。なに?」
「あたし、要ってゆーんだけど。知ってる?」
「・・・・・・おまえが」
「そう、あたし。ごめんね、変な噂ながして」
「謝るなら綾乃に謝ってくれよ。誤解が解けないと困る」
「やだよ、謝るなんて。そしたら綾乃さんとヨリ戻しちゃうでしょ」
「・・・・・・おまえ、」
「あは、あたし、赤也くんが好きなんだぁ。ね、あたしと付き合ってよ。でないと、もっと色んな噂ながしちゃうよ?今度は、そうだなぁ・・・綾乃さんが別の子とセックスしたとか?」
「綾乃に手ぇだしたら許さねぇ」
「ふふ、じゃああたしと付き合って」

彼女が手を差し出す。取らなければ綾乃が傷付き、取ったとしても綾乃は傷付いてしまう。どちらが良いのだろうか。いや、どちらもダメだろう。綾乃を傷つけてはいけない、あいつは俺が守らなくちゃいけないんだ。
そうは思うが、思うだけで、方法なんてわかったものじゃない。馬鹿な脳みそをフル回転させて考えてみたけど、けっきょく時間が過ぎていくばかりだった。

「・・・交渉は決裂?うわさ、流しちゃうよ?」

要が可愛らしく首を傾げる。綾乃がやったらもっと可愛いだろうな。あたりまえか、んなの。綾乃は世界一可愛いんだから。っと、惚気てるばあいじゃねぇ。

「・・・あー、その、「赤也」・・・え?」
「・・・は!?なんで、あんたここに・・・ッ」
「赤也に謝ろうと思って、戻ってきたの。・・・要さん、嘘吐きだったんだね」
「ッ、るさい!!」

要の後ろから姿を見せた綾乃は、静かにそう言い放って、要はそれを受け止められずに走り去っていってしまった。あ、と俺の口から呆然とした呟きが漏れる。綾乃は廊下の方を見て悲しそうな顔をしていた。

「・・・あ、その、赤也・・・・・・さっきは、」
「・・・・・・綾乃」
「え?」
「好きだぜ!」
「っ、!」


ィング


顔を真っ赤にした綾乃を抱きしめて、小さく微笑んだ。やっぱ、ラストはこうじゃなくちゃな!
――――――――――――
最近、離愛のおかげか赤也人気が急上昇中です。
リクエストありがとうございました!

2013/2/5 repiero (No,97)


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